大関・琴桜が語り尽くす!綱とり・技・駆け引き・先代…「相手の良さを潰して勝負どころを見極めないと…」
初場所で目指す頂点
祖父に横綱の初代琴桜、父に元関脇の琴ノ若(現佐渡ケ嶽親方)を持つ角界のサラブレッド、琴桜(27)。11月場所は自身最高成績の14勝1敗で初めて賜杯を掴み、1月場所での綱とりに挑む。 【写真】祖父で元横綱の琴桜 日刊ゲンダイが琴桜に話を聞いたのは冬巡業中。その時点では綱とりについて「わからない」としか答えなかった。 「意識はまったくありません。やってみなければわからないので、少なくとも今はまだ意識はないですね。(綱とりに向けては)余計なことはせず、自分の持っているものを出し切ること。まずはそこからだと思います」 綱とりの重圧は挑戦した者にしかわからないという。まだ綱とりの土俵を踏んでいないので語れない、ということだろう。 優勝した11月場所についても、「勝ち進んでも気持ちの変化などはまったくなかった。平常心?まあ、そうですね。日々変わらず、集中してやったのが結果としてそうなった(優勝)のかと思います」と、振り返る。 少々、気が早いが、理想とする横綱像を聞いてみた。 「うーん……。(しばらく考えてから)難しいですけど、心技体が揃った力士にはなりたいですね。心技体、すべてが充実しないと(横綱には)上がれないと思います」 大関昇進後は9月場所を除き、すべて2ケタ勝利。しかし、裏を返せば何かひとつ、足りなかったということでもある。 「2ケタ勝ったからといってそれでいいわけではないし、2ケタ勝ったらその次を求められますから。(成績には)全然満足していないし、今後もやるべきことをやるだけですよ」
日ごとに違う「自分の良さ」
大相撲の力士はさまざまなタイプがいる。徹底的に相手を分析する力士もいれば、「意識しすぎるから、翌日の対戦相手すら知りたくない」という者もいる。負けた相撲を研究するかしないかも、力士ごとにさまざまだ。琴桜はどうなのか。 「その日の相撲は後で多少、映像を見ますけどそれくらいですね。負けた相撲を分析? 1場所、1日2日で直るものじゃない部分もあります。映像を見返しすぎて、自分の悪い部分を意識しすぎてもいいことはありませんから。だったら自分の持ち味、良い部分を出すことを考えます」 琴桜の良い部分──。11月場所は先代尾車親方(元大関琴風)や、玉ノ井親方(元大関栃東)などが、「前に出て攻める相撲が良かった」と口を揃えていた。 しかし、琴桜が考える「自分の良い部分」とは、そうではない。 「何が良い部分かは、本場所によって違いますよ。その時の状態の良しあしもあります。もちろん、本来なら継続して同じ状態を保てなければいけないんですけどね。その中で、内容が伴っているかどうかもあります。一場所一場所、自分の体の状態をしっかり確認しながら、その中で(どこが良いかを)見極めていくということですね。『前に出て攻める相撲』にしても、心技体を噛み合わせていかないとダメなんです」 そして、「何がその時の自分の良い部分かって言いすぎると、(相手に)バレるんで。それは言いたくないです」と笑い、さらにこう続ける。 「相撲は対戦競技。流れもあるし、内容が伴わなくても白星につながることだってあります。そうした相撲を自分でどう捉えるか。その時その時、自分のどの部分で勝負できるか。ただ、漠然と相撲を取るだけじゃなくて、自分の勝負どころを見極める。相手の良さを潰して、勝負できるところで勝負しなければいけない。相手が自分以上の良い部分を出してきたら、勝てるものだって勝てませんからね。そうしたことができなければ、上位では(相撲を)取れませんよ」