「ワンマン運転」とは--JR山手線にも導入決定、人手不足に対処、安全性はどうなる?
東日本旅客鉄道(JR東日本)は11月6日、山手線を含む首都圏の主要線区において「ワンマン運転」を順次導入すると発表した。同社は主に末端区間でワンマン運転を導入していたが、ついに都市部路線にも本格導入する。 【画像】列車の「立体視カメラ」が線路の支障物を検知--京浜東北線車両で試験中 ワンマン運転とは ワンマン運転とは、車掌が乗車せず、運転士のみで列車を運行することだ。 導入予定時期と線区は下記の通りだ。 ・2025年春~:常磐線(各駅停車)綾瀬駅~取手駅間(10両編成)、南武線 川崎駅~立川駅間(6両編成) ・2026年春~:横浜・根岸線 八王子駅~大船駅間(8両編成)(東神奈川駅~大船駅間は、横浜線車両E233系8両編成のみワンマン運転) ・2030年頃まで:山手線、京浜東北・根岸線、中央総武線(各駅停車)、埼京・川越線 導入の背景にあるのが人手不足だ。JR東日本によると、ワンマン運転によって「鉄道をより効率的でサステナブルな輸送モード」に変革するという。さらに、従業員の就労意識を「人ならではの創造的な仕事」へシフトさせるとしている。 ステレオカメラで線路上障害物検知も ここで気になるのが安全性だ。これまで車掌が担っていた業務も運転士に集中してしまう。結果として事故の増加に繋がらないのだろうか。ここにはテクノロジーを駆使したさまざまな取り組みがあった。 まず、ホーム乗降時の安全確認については、運転席の乗降確認モニターから、全ドアの乗降状況を運転士が一目で確認できるようにする。駅へのホームドア設置を進めるという。 さらに、列車の走行中の負担を軽減するため、自動列車運転装置(ATO)または定位置停止装置(TASC)を整備する。これによって、輸送安定性の向上も実現できるという。 線路上の障害物への対応については、車両前方に搭載したステレオカメラの画像から、列車が走行する線路内の障害物をリアルタイムで検知するシステムを開発する。京浜東北・岸根線の車両で走行試験中で、引き続き開発を進めるとしている。また、将来的には運転士を不要にするドライバレス運転の実現もめざす。 車内で「非常事態」が発生したら? 車内で非常事態が発生した場合にはどうするのか。その際は、車内の状況をいち早く把握することを目的に、非常通報装置が扱われると輸送指令室のアラームが鳴動。車内防犯カメラのリアルタイム映像を確認できるようにする。すでに山手線1編成に試験導入してり、2025年度から山手線への導入をめざす。 車掌が担っていた乗客への案内についても、運転士が車内放送できない場合は輸送指令室から車内放送し、乗客にタイムリーな状況を伝える。 そのほか、万が一列車外への避難が必要になった場合に使用する「避難はしご」を、列車の最前部と最後部に整備。必要により乗客自身も使用できるが、避難の際には近隣の駅から係員を派遣する。 JR東日本はこうしたテクノロジーの導入によって、ワンマン運転でも安全性と安定した運行を担保できるとの考えだ。日本は加速度的な人口減少が続き、それは首都圏近郊も例外ではない。将来にわたる鉄道網の維持にはワンマン運転による効率化が不可欠となる。