欧州もアジアも「もしトラ」シフトの連携強化:米の「孤立主義」回帰を恐れ
インド太平洋でも連携
インド太平洋では、中国を念頭に置いた動きが活発だ。米国のブリンケン国務長官とオースティン国防長官は7月28日、東京で外務・防衛担当閣僚による日米安全保障協議委員会(2プラス2)を開いたのに続き、30日にはマニラへ移動してフィリピン政府とも外務・防衛閣僚会合(2プラス2)を行った。 この間の同29日には、東京でブリンケン長官、日本の上川陽子外相、オーストラリアのウォン外相、インドのジャイシャンカル外相による日米豪印4カ国の戦略対話枠組み「クアッド(Quad)」の外相会合が開かれ、南シナ海の「中国の威圧的で脅迫的な行動」を名指しで批判する共同声明を発表した。 中国とフィリピンの間では、南シナ海のアユンギン礁(中国名・仁愛礁)を巡る緊張が高まっており、今年4月には日米、フィリピンによる初の3カ国首脳会談が米国で開かれた。5月にはオーストラリアも参加した日米豪比4カ国の国防・防衛相会合を開いて対応を協議していた。 フィリピン北部と台湾本島は約100キロしか離れておらず、中比紛争の行方は台湾の安全にも密接に関わる。これらの多国間協力は中国の覇権主義的行動を牽制する有効な対抗策だ。米比2プラス2では、フィリピン軍の装備充実などに向けて米国が5億ドル(770億円)の支援を約束した。8月6日には、米国で米豪2プラス2も開かれた。
日米韓協力の制度化
バイデン政権下で日米韓3カ国の戦略的連携が大きく前進したことも見逃せない。きっかけは昨年夏、バイデン大統領が日韓首脳を米キャンプデービッドに招いて初の日米韓首脳会談を開いたことだった。これまで米韓同盟が北朝鮮対応に事実上特化していた状況を改め、日米韓がそろって安保協力をインド太平洋全域にシフトし、中国にも対応していくことになった。 これを受けて、今回の日米2プラス2と同じ7月28日には、木原稔防衛相、オースティン国防長官、韓国の申源湜国防相による日米韓防衛相会談が日本の防衛省で開かれた。3カ国会談の眼目は、こうした連携の流れがトランプ政権になっても失われないようにすることにあったといってよい。会談では、日米韓の共同訓練や閣僚会合の定例化を目指す覚書に署名し、「3カ国の安全保障協力を制度化する」と明記した共同声明を発表した。