観客あふれた対決、主役は京都工学院の「たたき上げ」 高校ラグビー
◇全国高校ラグビー大会2回戦(30日・東大阪市花園ラグビー場) ◇○京都工学院15―7中部大春日丘(愛知)● 【写真特集】中部大春日丘-京都工学院 伝統校と前回8強校の対決は、第3グラウンドを囲む陸上トラック付近を含めて、2回戦では異例の観客1万人が押し寄せた。注目の一戦で主役になったのは、京都工学院の屈強なFW陣だった。 互いの防御が堅く、前半は0―0。ロースコアの8―7だった後半18分ごろ、見せ場が訪れた。 ゴール前で中部大春日丘の連続攻撃に耐えながら、京都工学院のプロップ加藤瑠絃(るいと)は「106人の部員の思いを背負って魂を込めてタックルしよう」と気持ちを奮い立たせた。ゴールラインを越えられたが、あきらめない。地面との間に110キロの巨体をねじ込み、ボールを地面に接地させるグラウンディングをさせずにトライを阻止した。 ビッグプレーが飛び出した直後の攻撃で突き放した。後半22分、相手ゴール前のラインアウトからモールを形成し、最後尾のフッカー川口士央(しおん)がトライを奪った。 この日2本目のモールからのトライ。スクラムでも押し勝つなどパワーで主導権をつかみ、FWリーダーの川口は「タックルとFWのセットプレーで上回ることができた」とシード校を破った勝因を挙げた。 優勝4回を誇る前身の伏見工は伝統的に展開ラグビーを志向していた。新校名となって初めて挑む今大会も、バックス陣に高校日本代表候補らを擁する。 一方、大島淳史監督が「たたき上げ」と表現するFW陣は、中学時代に注目された選手が少ない。それでも、寝て起きてタックルを繰り返す地味な練習などで力をつけ、大舞台で存在感を示した。 元日の3回戦に進み、憧れの第1グラウンドで戦う権利を得た。加藤は大歓声について「びっくりした。とても歴史を感じた」という。伏見工時代に数々の名ドラマを生んできた舞台で、新年も物語を紡いでいく。【長宗拓弥】