<リオ五輪>体操の種目別ゆかで“ひねり王子”白井はなぜメダルを逃した?
種目別ゆかで金メダルを期待された白井健三(19、日体大)がメダルを逃した。 この種目で世界選手権を2度制して「ひねり王子」の名で呼ばれる「ゆかのチャンピオン」は、着地で何度も崩れ、本来の力を発揮できずに4位に終わった。 立て続けのミスの背景に何があったのだろうか。 かつて三人の金メダリストを育てた指導者、城間晃氏(シロマスポーツクラブ代表)は、白井の敗因を「2つの負の連鎖」と語った。 1つめの負の連鎖は、先に演技をした内村のラインオーバーだという。 内村は最初の着地で綺麗に両足をそろえてバーンに下りたが、バランスを崩して踏みとどまろうとして両足ともラインに出てメダルへの期待が遠のいた。このミスが白井に連鎖したというのだ。 「関係ないと思われるかもしれませんが、体操の世界ではよくあること」と城間氏は言う。 「同じ日本チームですから、内村がメダル圏内にとどまれば白井も『よし自分も!』と集中する。ところが内村のミスで自分が決めなければと力が入ったように見えました。ゆかの演技の場合、選手は踏み切るときの力加減や、空中で宙返りやひねりをくわえているときの身体の締め方、そして後方系の技なら着地面が見えてくるときの身体の整え方で着地を決めようとします。コンマ何秒かの調整です。ところが着地を止めようと力が入ると、この感覚が知らず知らずズレてしまう。これがミスの連鎖です」(城間氏) 今から16年前のシドニー五輪、団体メダル獲得をめざした日本は、ゆかの演技で最初の選手がラインオーバーのミスを犯し、後続の選手が次々とラインオーバーとなって、当時、悲願だった銅メダル獲得を逃した。 「団体でも種目別でも、体操には、そういう面がある」と城間氏は言う。 白井にとって不幸だったのは、これが「何度も着地のある」ゆかの演技だったことである。 最初のリ・ジョンソン(後方抱え込み2回宙返り3回ひねり)で白井は一歩跳ねた。 これだけなら、大きなミスとは言えなかった。 だが、ここから、2つめの負の連鎖が始まった。 「次は着地を決めようと思う。でも、もう感覚がズレているんです。逆に今度こそと思うとズレはもっと大きくなっていきます」(城間氏) 実際、白井は「前方1回ひねり~前方3回ひねり」で、あわや尻持ちをつくかというほど大きく後ろにバランスを崩した。さらに「後方2回半ひねり~前方2回半ひねり」では前のめりに大きく2歩も崩れた。 そして、最後のシライ(後方伸身4回ひねり)も結局、後ろに一歩動いてしまった。 本来16点台を出せるはずの白井は、減点が響いて15・366の4位に終わってしまった。 本来、獲れるはずだった金メダルである。 白井の悔しさは察するに余りあるが、負の連鎖を断ち切れなかった経験を糧にさらなる奮起をしてほしいと願う。