『るろうに剣心』強面で不良警官ながらも実は世帯持ち⁉︎ 斎藤一の人気の秘密を考察
緋村剣心と志々雄真実がついに対面を果たし盛り上がりを見せる『るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-京都動乱』。本作は、作者・和月伸宏の監修のもと、原作を1話から再構築して制作された完全新作アニメの第2期だ。 この「京都動乱」編で活躍する主要キャラクターの1人で、人気投票などでも常に上位にランクインする元・新撰組三番隊長の斎藤一。優男かつ「不殺(ころさず)」」の信念を持つ剣心とは異なり、長身かつ強面で、「悪・即・斬」の信念のもと敵は容赦なく切り捨てる冷徹な一匹狼が、なぜここまで人気キャラクターとなっているのか?本稿ではその魅力を考察したい。 ▪️剣心の「不殺(ころさず)」との対比が魅力!新撰組時代から「悪・即・斬」の信念を貫き通す 斎藤一というキャラクターを語る上で欠かせないのが「悪・即・斬」という、潔すぎる信念だ。斎藤は、幕末の時代、新撰組の隊長という幕府側の用心棒として、数々の反幕府勢力=悪を問答無用で切り捨ててきた。これだけを聞くと、幕末に「人斬り抜刀斎(幕府の要人暗殺を請け負った剣士)」として、たくさんの人間を正義の名の元葬ってきた剣心と共通点が多いように思える。 しかし、維新後の2人のスタンスの変化はまさに対極と言えるだろう。維新後、「人斬り」から「不殺(ころさず)」を誓って、逆刃刀を持つ流浪人となった剣心とは対照的に、斎藤は「藤田五郎」に改名し警官となっている。これにより、廃刀令によって帯刀が容易にできなくなった明治時代においても、彼は幕末同様真剣を所持。新撰組時代と同様、「悪・即・斬」という自身の信念を貫きつづけたのだ。 ▪️敵を正面から狙い突き!シンプルすぎる最強技「牙突」にホレる また、斎藤一の必殺技「牙突」のシンプルさからも、彼の芯の強さや正義感が色濃く投影されている。「牙突」は、真剣を水平にし真正面から敵に突進して攻撃する平刺突(ひらづき)技だ。 中距離から間合いを詰め、敵陣に真正面から突進していくため、きまれば相手に致命傷を追わせられるが、基本、左片手での一本突きに右手を添えて狙いを定めるため、間合いを詰めた際のガードが手薄になり近距離でカウンターを喰らうリスクも高い。かなりハイリスクハイリターンな決め技と言えるだろう。しかも、ユニークなのが、他の多くのキャラクターが複数決め技を持っているのに対して(剣心はなんと10技以上!)作中登場する斎藤の技は「牙突」のみなのだ。 技数をいたずらに増やすよりも、1つの技を徹底的に鍛え上げ最初の一度で敵を確実に仕留める、そんな斎藤一のシンプルかつ男気溢れる戦術がこの牙突に表現されているのだ。 ▪️実は愛妻家!? 恵や操たちのピンチを救う優しい一面も? 斎藤のキャラクターは一見すると「冷徹」。「殺人鬼のような目つき」と喩えられるほど鋭い目つきの強面で、基本的に無愛想、そして「悪」と判断した相手を容赦なく切り捨てる。剣心たちと対峙する時は、その口の悪さなども相まって近寄り難そうなイメージだ。しかし、「京都動乱」編では彼に時尾という妻がいて、実は世帯持ちであったことが判明。志々雄真実によって支配された新月村の一件が片付いた後、身寄りのない少年栄次をどうするかという話になった際に、突如斎藤が家内・時尾の名前を口にするのだ。剣心と巻町操が驚きの反応をすると、今度は「安心しろ、時尾はできた女だ」とすぐに返す。実は世帯持ちだったことも衝撃だが、男尊女卑の風潮があった明治時代に、奥さんを「できた女だ」と即答できる斎藤は愛妻家で、女性に紳士的な対応ができる男性なのかも知れない。さらに他のエピソードを見て、実は優しい性格なのでは?と感じられる一面も。 たとえば、剣心を追う四乃森蒼紫に、剣心が京都へ出発したことを話して、脅されていた高荷恵を助けたり、操たちが新月村で志々雄一派の戦士たちに襲われかけた際にも助けに入ったりしている。また、両親や兄妹の復讐に燃え、志々雄一派の尖角に最期のとどめを刺そうとする栄次を止めに入り、「どのみちコイツは死刑確定だ」と伝えたシーンなども、もちろん事実ではあるだろうが子供に手を汚させたくないという斎藤なりの優しさなのかもしれない。 「悪・即・斬」の信念を持ち一見冷徹そうに見える斎藤。しかし、実は愛妻家で軍人や剣士など以外の非戦闘員には優しい一面を見せる。確固たる信念と女子供に優しい一面、そんな男らしさこそ斎藤一が人気の秘密なのかも知れない。
あさみ