異例の甲子園大声援を受けた阪神・藤浪の“復活怪投“は2軍落ち決定も仕方のないものだったのか?
「まず全力で投げていない。彼の武器である力感はなく、カット、スライダーが中心。これまでの藤浪の悪いときは、そのカット、スライダーという球種も抜けるんだが、そこはコントロールできていた。カット、スライダーというカウント球が、ひとつでもあったのは成長。力まない分、体から腕も離れず、フォームのバラつきをなくしていた。初回の満塁ピンチで、押し出しでも与えていれば、苦しかったがよく粘った。アルモンテのインコースをえぐったストレートは、きょう一番のボール。全体的に8割程度に抑え気味に投げたボールで、あそこまで中日打線を押し込むんだから、その能力はセ・リーグを代表するものであることは間違いない」 池田さんは藤浪の新しいピッチングスタイルに注目した。 ファームでは、8試合に先発し、43イニングを投げ、防御率、1.88、14四死球の結果を残してきたが、それも球威ではなくまとまりを重視したもの。試行錯誤の末、1軍切符を手にしたのである。 だが、諸刃の部分も見えたという。 「中日の右打者はみんな腰をひいていた。恐怖感を与えるのが藤浪の魅力ではあるが、今後、またデッドボールでも続けば、乱闘騒ぎになるだろう。そうなると精神的な動揺は避けられなくなる。あれだけ球数がかかると、守り攻撃にも負担がかかる。ベンチも含めてみんなに忍耐が必要な投手であることは変わりない。そこをどう我慢するか。使い方が難しい投手。私は、ここで使ったのなら、次も先発で使い続けるべきだと考えていたが」 確かに1イニングに38球も要していれば野球にならない。だが、「ストライクが入れば打たれない」というような球威を持ったピッチャーは、プロの世界を見渡してもそうはいない。 「今後、復活の可能性はあると思うし、自分の体をコントロールするための入り口にはいると思う。ヨーイドンでいいスタートを切れればゲームは作れるし、ここから夏場、チームにとって必要な戦力。ソラーテが入って外国人投手を一人落としているのだから、なおさら藤浪は、今後の優勝、CS争いに必要なプラス戦力だと思う。ファンも彼の苦しさを知っているから温かく見守ってくれた。彼に頑張って欲しいという声は大きい。彼が立ち直れば、勇気づけられるピッチャーが球界には、たくさん出てくると思う」 池田さんも、今後の復活の可能性について言及した。 おりしも、この日は、大正13年8月1日に甲子園大運動場として誕生した甲子園球場の95周年のメモリアルデー。試合前には、タイガースと高校野球が彩ってきた甲子園の歴史がビジョンに流れた。 ナレーションは、こう語りかけていた。 「大正、昭和、平成、令和、時代は変わりましたが、甲子園のその優しさは変わることはありません」 藤浪は、春夏連覇を果たし、甲子園の申し子として、和田豊元監督がクジを引き、ドラフト1位で阪神へ導かれた。この日、彼を包み込んだ甲子園の“優しさ”を忘れてはならないだろう。それは彼が完全復活を果たすための何よりの礎になるはずである。