「義務なのに…」チャイルドシート、5歳になると着用率が激減のわけは? 専門家が指摘する理由と危険性
「危ないという意識が甘かった」
長野市の団体職員の女性(40)は、子どもが通う保育園の駐車場で、孫をチャイルドシートなしで助手席に乗せて送迎している男性をよく見かける。「心配だなと思ってはいるけれど、注意するのもはばかられるし…」。一方、自分自身もママ友とその子どもを自家用車に乗せて遊びに出かける際、人数分のチャイルドシートがなく、大人用シートベルトで子どもを乗せたことがあるといい、「危ないという意識が甘かった」。
シートベルトや抱っこで代用できる?
JAF長野支部(長野市)の大田彩・事業課長によると、チャイルドシートも大人用のシートベルトも、鎖骨、胸骨、腰骨といった体の硬い部分で衝撃を受け止めることで、致命傷につながりやすい部位への衝撃を避けながら、体が座席から飛び出すのを防ぐ構造になっている。そのため、シートベルトのサイズや位置が体格に合っていないと、事故の時に首や内臓などに強い衝撃がかかる恐れがあり、危険だという。
チャイルドシート代わりに、大人が抱っこした場合はどうか。大田課長によると、時速40キロで衝突した場合、体重の約30倍の衝撃がかかるため、体重10キロの子どもならば300キロに相当する重さになる。到底、大人の腕で支えることのできる衝撃ではなく、体は車内に激しく叩きつけられ、フロントガラスを突き破って車外に飛び出すこともある。
油断が最も危険
また、運転開始から30分以内が最も事故が起きやすい傾向があり、死亡事故件数は、時速40キロ以内で走行中が最も多いとも指摘。死亡事故を起こした人の6割はそれまで無事故・無違反だったとの統計もあるといい、「今まで大丈夫だったから、今日も大丈夫なわけではない。『近所だから』『ちょっとだから』という油断が最も危険」。
大田課長は「子どもがチャイルドシートを泣いて嫌がれば『かわいそう』と感じる人もいるかもしれないが、万が一事故に遭って、けがをしたり命を落としたりするのとどちらがかわいそうかを考えて、一生の後悔につながらないよう正しく使ってほしい」と訴える。
たった数日の帰省でも
長野県警交通安全対策室によると、自動車に乗っていて交通事故でけがをした0~5歳のうち、チャイルドシートを着用せずに重傷を負った子どもの割合は、着用していた子どもの4倍に上っている。市川正樹室長は「万が一のときにチャイルドシートをしていないことで大きなけがにつながる可能性がある」と強調。日々の移動だけでなく、帰省した孫を車に乗せる場合にも必ず使用するよう求め、「使うのは年にたった数日であっても、大事なお孫さんの里帰りを楽しみにチャイルドシートを用意するのも、祖父母の愛情ではないでしょうか」と話した。