イスラエル、イランが初めての直接交戦:中東情勢緊迫化エスカレーションのリスク
イスラエルとイランは歴史上初めて直接戦火を交えた
イスラエルとイランとの間で報復の応酬が続いている。4月1日には、イスラエルによるとみられる、在シリア・イラン大使館への空爆が行われた。同国革命防衛隊の精鋭部隊「コッズ部隊」の将官ら13人が死亡した。これへの報復としてイランは13日に、ドローンや弾道ミサイルなど300発以上をイスラエルに向けて発射した。 そして19日には、イラン中部イスファハンでイスラエルによるとみられる報復攻撃が行われた。イスファハンの空軍基地近くで爆発音が聞こえ、また上空ではドローン3機が防空システムにより破壊されたという。 イスラエルとイランの対立は、1979年のイラン革命で反米政権が成立して以来、45年間続いている。しかし両国は、今まで互いに直接戦火を交えることは避けてきた。 ただしイランは、中東諸国に広く分散している親イラン勢力を使って、イスラエルを間接的に攻撃してきたのである。レバノンのシーア派組織ヒズボラ、イエメンの武装組織フーシなどが代表的であり、パレスチナ・ガザ地区を実効支配するハマスもまたイランと密接な関係にある。昨年10月のハマスによるイスラエルへの攻撃は、イランの指示によるものとイスラエルは考えている。 4月13日のイスラエルによるイランへの攻撃により、両国はお互いの領土を直接攻撃する新たなエスカレーションの局面に入った。
イランの核施設を標的にしなかった
4月13日のイランへの攻撃について、イスラエルは正式なコメントを出していない。その実態については、米国のメディアの報道によって明らかになった。 米ABCニュースは19日に米政府高官の話として、今回のイスラエルによる攻撃は、イランのイスファハン近郊ナタンツにある核施設を防護するレーダー設備が標的だったと報じた。イラン国外からイスラエルの戦闘機がミサイル3発を発射したとされる。 他方、米CNNテレビは、標的になったとされるイスファハン近郊の空軍基地では目立った被害はなかったと報じている。これは、衛星画像の分析によるものだ。 米ABCニュースによると、今回のイスラエルによる攻撃の目的は、イスラエルが核施設を損傷させる能力があることをイランに伝えることにあったと報じている。米紙ニューヨーク・タイムズは19日に複数の米政府関係者の話として、イラン攻撃前に米政府がイスラエルに対し、死傷者を極力出さない作戦にとどめるよう促していたと報じている。 イラン革命防衛隊幹部は18日に、イスラエルがイランの核施設を攻撃すれば、イスラエルの核施設を「最新兵器で攻撃する」と警告した。イスラエルは今回の攻撃で核施設を標的にしなかったのである。