かつての少女たちが立ち上がったーー再建目指す「サン宝石」の敗因と、『りぼん』&『nicola』元編集長が語る魅力
やがて時代は紙からWebへ。同社も2000年代初頭からいち早くECサイトに注力してきたものの、主力販路にできなかった。大半の小学生が親のスマートフォンからサイトを閲覧する。キッズにとっては魅力的なグッズも、親からは「こんな実用性のないもの、いらないんじゃない?」とブロックがかかりがちだ。 物欲よりもSNSでのコミュニケーションや体験を重視する子どもたちが増えたことも、マイナスに働いた。 『nicola』元編集長・Mさんは「事業継続のための課題が手に取るようにわかる」と共感する。出版社からWeb業界に転職し見えてきたものもある。 「ジュニア向け雑誌もサン宝石さんも、子どもたちにWeb上でどう決済させるかというビジネス上の課題を常に抱えてきました。現時点では、小学生が安心して利用できるホワイトなウェブサイトには限りがあります。際限ない課金やアダルトサイトへのアクセス、ナンパや犯罪といった危険性を排除した安全なネット空間が実現するのであれば、サン宝石さんのマーケティングや商品開発とマッチするかもしれません」 将来的にはアバターで没入できるメタバース(デジタルの仮想現実空間)なども選択肢の一つだろうという。
「サン宝石さんが雑誌とともに育んできた少女カルチャーを、次の世代にどう引き継ぐか。少女たちの居場所をどうしたら新たに作れるのか。ジュニア向けコンテンツにたずさわってきた私たち共通の課題だと感じています」
たとえ姿は変わっても
今後、サン宝石は新スポンサーから資金援助を受け、再建を目指す。現在はスポンサー候補数社と条件面の交渉中で、近く新体制が発表される予定だ。 経営陣の刷新や、業態・商品の雰囲気が大きく変わる可能性もある。 「債権者様への返済が最優先事項で、私どもの希望は二の次なのが民事再生だと理解しています」と前置きしつつも、「事業の心臓である通販カタログを継続して発行し、ファンの皆さんに愛された姿を少しでも残せたらという思いもあります」と渡邊さんは本音を口にした。