フルコンタクト空手は改良を重ねてヒーロー誕生を目指す
~選手の気持ちが高まり少しでも強くなれるために何でもする
「喜んでくれて目標になるものならば何でも柔軟に取り入れたい。新しいことをやると賛否両論ありますが、選手たちのためになることを常に探して提供したいです」 ビデオリプレイシステムを導入(昨年の代々木大会では14面中4面で導入)してジャッジの正確性を高めた。また、大会開始前には細かくわかりやすいルール説明を行い、国歌斉唱に有名アーティストを起用するなど演出面にも多くの工夫を凝らしている。 「必死に頑張る選手たちが、勝っても負けても納得できるジャッジは必要不可欠です。将来的には全コートにビデオリプレイシステムを導入して、俗にいうグレー判定をゼロにしたいです」 「演出面が豊かになれば注目度も高まり会場へ足を運んでくれる人も増えるのではないか。多くの観客の中で戦うことで選手たちの気持ちも高まり、実力以上のものを出せることにも繋がるはず。結果的に名勝負が生まれ、観ている人たちも満足してくれると良いですね」 今年のインカレ(代々木大会)では SEGAキャラクターであるソニック&シャドウとのコラボが実現。空手道着を身にまとった2人の姿はジュニア世代のみでなく幅広い層で大きな話題だ。 「選手がやる気が出る場所を作るのが、我々の仕事であり責務だと思います」と断言する。大阪大会からは優勝者の中から武道奨励金も贈られるようになった。 「選手たちは遠征費等の活動費を自己負担している。プロではなく五輪選手のように強化資金が出るわけでもないので、我々にできる精一杯のことをやりたい。選手が強くなるのに少しでも力になれれば嬉しいです」
~どのような場所からでもヒーローは生まれる
大阪大会ではサブタイトル「フルコンにはヒーローが必要」が付けられた。ヒーローが誕生すればジュニア選手たちにとっては大きな目標となるからだ。 「『こういう選手になりたい』と誰もが感じる選手がヒーローだと思います。空手競技での強さはもちろん、振る舞いや礼儀作法にも優れた人間的に魅力ある選手。コートの中でも外でも人気があるヒーローが出てきて欲しいです」 「世界王者などがヒーローなのは当然ですが、地区大会や道場内でもヒーローは生まれると思っています。そういった選手をたくさん生まれて、それを見た選手が目標にして欲しい。フルコンタクト空手をもっと好きになって、本気で取り組んでくれるはず」 11月17日には東京・代々木第一体育館でのビッグマッチが開催される。インカレと全日本ジュニアにおける激しく熱い戦いは目前に迫っている。 「フルコンタクト空手は本当にやってみないとわからない。圧倒的な優勝候補の選手が少しの油断やコンディションの乱れで負けることも多い。目が離せない戦いをぜひ体感して欲しいと思います」 インカレや全日本ジュニアに参加する選手たちは、「Z世代」と呼ばれる。何かと区別されがちな年代だが、コート上で戦う姿を見ればそういう先入観は吹っ飛ぶだろう。勝利を目指してひたすら戦う姿からは、何かを感じさせてくれるからだ。 フルコンタクト空手の今後のさらなる改良、進化に注目だ。今時、見つけにくくなった「ヒーロー」を発見できるかもしれない。 (取材/文:山岡則夫、取材協力/写真:全日本フルコンタクト空手コミッション)