目黒のとんかつ店に感動…人の心に響く商品・サービスに共通する「3つに分ける」の極意
「しやすい」の作り方 #1
日頃、私たちが何気なく購入している商品・サービス。実は気づかないうちに「買いやすい」「楽しみやすい」ものを選んでいるケースがある。コクヨのワークライフスタイルコンサルタント・下地寛也さんの著書で生活の中におけるさまざまな「しにくい」を、「分ける技術」を使って「しやすい」に変えることを探った『「しやすい」の作りかた』(サンマーク出版)より一部抜粋、再構成してお届けする。 【写真】石田三成が豊臣秀吉に気に入られるためにやったこと
先味、中味、後味の3段階に分ける
分け方を変えるだけで、人の心に響く商品やサービスになる。 飲食業を例に考えてみよう。 「分けて提供する」代表は、フランス料理のフルコースだ。 一般的には、前菜→スープ→パン→魚料理→ソルベ(シャーベット)→肉料理→フルーツ→デザートといった順番で出てくる。なんでこのタイミングでパンやソルベが出てくるのかと思うが、それぞれにきちんと意味がある。 パンはスープと魚料理の間の口直しとして、ソルベは魚料理と肉料理の間の口直しとして出てくる。 和食の懐石料理などもそうだが、コース料理は一品一品を出すタイミングを分けることで、客を楽しませる手法をとっているわけだ。 1、とんかつ名店の「先味」 では、「とんかつ」などの単品料理では、このような楽しみが味わえないかというと、そうではない。
大きめと小さめを分けて楽しめる
東京の目黒に、とんかつの名店がある。昭和初期に創業の老舗だ。お店はコの字形のカウンター席になっていて、その後ろに順番を待つ人が座る席がある。 待っている人は、普通であれば、先に来た人が順番にずれながら動いていくか、入口で名前を書いて呼ばれるのを待つところだが、この店ではそうはしない。 お客さんは入店すると、待合席の空いているところにランダムに座る。 初めて行くと「本当に順番通りに呼ばれるのだろうか」と不安になるが、じつは入店したお客さんの順番を完璧に覚えている店員さんがいて、間違わずに声をかけてくれるのだ。 私は初めて行ったときに、その様子を見て感動してしまった。「プロだ!」と。 この店は、あらゆる工程が分業になっている。先ほどのお客さんを順番に呼ぶ職人、とんかつを揚げる専門の職人、切る専門の職人、盛り付けてお客さんに出す職人などだ。 流れるようにとんかつが作られる様子に、まるでショーでも見ているかのような感覚を覚える。食べる前から「期待感」で一杯になるのだ。 2、とんかつ名店の「中味」 いよいよとんかつが出てくる。 すると、とんかつはタテだけでなくヨコにも切ってある。しかもそのヨコ向きの切り方がとんかつの真ん中ではなく、1:2くらいの比率でカットされている。 つまり、小さめのとんかつと大きめのとんかつを分けて楽しめるように考えられているわけだ。 味はというと、衣はサクッとしていて、肉はジューシーでじつに美味しい。この原稿を書きながら、今すぐにでも店に飛んでいきたくなる。