声の専門家が選ぶ「現役最強のイケボ俳優」は? 決定版(2)完璧すぎる…業界随一の“きれいな声”の持ち主は?
男性は目で恋をし、女性は耳で恋をする―。英国の作家ウッドロー・ワイアットが遺した格言だ。この言葉の真偽はさておき、“いい声”が人の魅力を高めるのは確かなようだ。そこで今回は日本美声チューニング協会の三浦人美会長に「最高のイケボ俳優」の選出を依頼。そこから垣間見えたのは彼らの弛みない努力の跡だった。第2回。(取材・文:司馬宙)
中川大志
―――2人目は、若手筆頭株の中川大志さんですね。 「中川さんの声は、今回選んだ5人の中で一番きれいな声だと思いました。まず、なにより声の輪郭がはっきりしていますよね。 それに、声の幅が広い。で、まだ若い方なので、音域は比較的高めだけど、下のほうもしっかりと鳴っている。鼻がしっかり使えてるんだと思います」 ーーー鼻、ですか。 「はい。一般的に、声って、喉だけを使うと思われがちなんですが、実際には鼻と口の空間の共鳴(ダブルホーン)を使っています。 で、きれいな声を出す上でカギになるのが、上顎の一番奥にある軟口蓋という器官です。おにぎりを食べた時に海苔くっつくところですね。声を出すときは、ここがペコペコ動くんですが、ここが硬いと鼻声(シングルホーン)になります。要するに、声の輪郭が潰れてしまうんですね」 ーーー確かに中川さんの声は響きが柔らかい印象があります。 「『かきくけこ』と『がぎぐげご』の発声がとてもはっきりしていますよね。これは、鼻と奥舌(舌の根元)がとても柔らかい証拠です。奥舌が柔らかいと、軟口蓋の開閉がうまく行くんですよ。これが、柔らかい響きにつながっているんだと思います」 ーーー中川さんは、誠実な役柄が多いイメージですが、その点も声質が影響しているんでしょうか。 「そうだと思います。中川さんの場合、新人社員や新人店長、弁護士、警察官など、豊川悦司さんが演じたハリソン山中とは対照的なフレッシュな役柄が似合いますね。 逆に、ハリソン山中のような渋い役を演じる際はかなり苦労されると思います」 ーーーちなみに、私たちが中川さんのように柔らかい奥舌を手に入れるには、どのようなトレーニングをすればいいでしょうか。 「『かきくけこ』の連打ですね。舌を鳴らして奥舌を軽く柔らかくしてから、『かきくけこ』を5回言う。これを、徐々に早くしていってください」 ーーー割と手軽にできるんですね。 「そうですね。歯磨きのついでにやっていただけるといいのかなと」 【著者プロフィール・日本美声チューニング協会三浦人美会長】 発声解剖学をベースにした声を出しやすい身体に整える美声チューニング®を提唱。20代はバンドのボーカルとして芸能事務所へ所属。年間300本のライブをこなし歌い続けた経験の中で発声・姿勢・呼吸等、身体のアプローチから声を変えていく手法を実践。バンド活動の終了後は、講師として稼働をスタート。人前で声を扱うことが多い企業代表や芸能事務所所属のアーティストレッスンまで延べ3,000 人以上の方を指導する。
司馬宙