【独自】TSMC熊本工場の内部へ③環境への影響は?より厳しい基準で排水処理
世界最大手の半導体受託製造企業、台湾TSMC。日本国内第1号となる熊本県菊陽町の工場は、2024年内に本格稼働します。熊本の地下水、環境への影響は?12月初旬、熊本朝日放送の取材カメラが工場内に入りました。 【動画を見る】TSMC工場内部をメディア初 単独取材!モニタリングルームに潜入!工場排水の処理は?
注目したのは、半導体の製造に不可欠な水。工場では、8つの井戸から1日8500tほど地下水をくみ上げ、3つの工程を経て「超純水」を作り出します。 半導体の洗浄に使われた後の廃水は、化学物質の種類や濃度によって36種類に分けて回収。水の回収率は75%で、再利用できるレベルに浄化して、工場で平均3.5回使用した後、排水が放出されます。
台湾工場にはないシステムを導入
排水は、日本の基準にあわせて処理されます。例えば、フッ素は国が8mg/lに制限していますが、工場が立地する菊陽町は、4mg/lに制限。熊本工場では、さらに厳しい自社基準3mg/lを設定し、台湾の工場にはない特殊なシステムを追加で導入してフッ素を除去しているそうです。
これらの数値は、工場内のシステムを集約しているモニタリングルームで、24時間、常時監視しています。 仮に基準を超える値が検出された場合は、自動弁で下水道への放流をストップする仕組みです。 水のくみ上げ量などを踏まえると、取材時の工場の稼働率は50%程度。熊本工場を運営するJASM水処理課の山本淳二さんは「JASMの社員は熱量を持って、情熱を持って、工場の運営を行っています。今後、異常なことが起こらないように工場の安定運転に臨んでいければ」と語ります。
熊本の環境を守ることはできるのか―
東京大学大学院などで研究開発に携わってきた国内半導体研究の第一人者、熊本県立大学の黒田忠広理事長は「単に不安だとか、安心してください、というだけでなくて、サイエンスできちんと説明すべき」と話します。
熊本でこれから建設される第2工場を合わせても、台湾で稼働するTSMCの生産規模の10分の1以下ですが、台湾では目立った環境への悪影響は報告されていないといいます。 ただ「きょう安全でも、あした何もしなくていいわけはない。常に第三者がモニターし、結果を地域住民含めて世界に開示する。それに対して科学者が今度はサイエンスの手法で冷静にその内容を分析し、考える必要がある」と指摘します。
熊本工場から放出された排水は、各ポイントごとに熊本県や熊本市などが監視し、その結果を専門家が分析、公表することになっています。 地下水を、環境を守っていくために、持続的な取り組みが求められます。 (KAB「くまもとLive touch」12月11・12日放送)