【住宅ローン返済シミュレーション】金利上昇で見込まれる「物件価格の下落」、差し引きで返済負担は軽くなるのか?
■ 今後「供給戸数の絞り込み」を行うデベロッパーも では今後、金利がいつ、どれくらい上がるのか、また金利上昇によって価格低下がいつから始まり、どの程度下がるのか――専門家でも正確に言い当てるのは至難の業なので、あまり考えすぎると、いつまでもマイホーム購入のタイミングを逸することになりかねない。 この価格、この金利なら十分購入できるという範囲で、気に入った物件が見つかったなら、その時が買い時と考えるのがいいのではないだろうか。なぜなら、今後は金利や価格の上昇だけではなく、さまざまな環境変化による住宅市場の見極めが難しくなってくるからだ。 例えば、先の三菱UFJ信託銀行のデベロッパーを対象とした調査では、金利上昇が新築住宅の供給に与える影響についても質問している(【図表3】参照)。 住宅ローン金利が0.5%上がった場合には、購買力の低下につながりかねないので、デベロッパーとしては、供給戸数の絞り込みを行う可能性が高い。そのため、調査では「供給戸数が減少する」と答えたデベロッパーの合計が77%に達していて、8割近いデベロッパーが供給は減るだろうと予測している。 消費者の側からすれば、それだけ選択肢が減ってしまうわけだから、価格が下がっても欲しいと思う物件がなかなか見つからない事態にもなりかねない。 住宅価格は、土地の仕入れ値に関する地価の動きや建物の建築費の動向も大きく影響してくる。現状ではそのどちらも上昇が続いており、特に建築費については「2024年問題」の人手不足が重くのしかかり、建築費の押し上げ要因になっている。
■ 価格を引き上げても売れる「都心・駅近」物件のニーズ デベロッパーとしては、マンションなどの原価がアップして、それを価格に転嫁、分譲価格を引き上げざるを得ない環境だが、比較的価格を上げやすい物件や場所がある一方で、上げにくい物件や場所もある。 最も価格の引き上げが受け入れられやすいのが、都心の駅近物件だ。事実、【図表4】にあるように、建築費の上昇に対応して「都心・駅近」物件の供給を増加させるとするデベロッパーが半数近くに達している。 調査分析に当たった三菱UFJ信託銀行では、「需要層が厚く消費者が価格上昇を受け入れやすい都心、とりわけ駅近立地にデベロッパーは新築マンションの供給を集中させる動きが生じている」としている。 もちろん都心の駅近物件は高額物件が多くなるが、それでも価格の引き上げ余地は大きいという。都心物件には相対的に高所得の世帯のニーズ、金融資産の保有が多い世帯の実需、投資目的の非実需など需要層が厚いので、土地の仕入れ値や建築費などマンション原価の上昇分を価格に転嫁しても、十分に売れるという計算が成り立つわけだ。 それに対して、比較的リーズナブルな価格帯で分譲される郊外のマンションは、価格の引き上げが売れ行き鈍化につながりかねないので、デベロッパーとしては開発に二の足を踏むことになる。