ノーベル賞の本庶氏 患者の感謝の言葉「何の賞もらうより嬉しい」
2018年のノーベル賞「生理学・医学賞」に決まった京都大学の本庶佑(ほんじょ・たすく)特別教授は10月1日夜、同大学で記者会見を開いた。免疫の仕組みの解明を新しいがん治療の理論につなげた本庶氏は「基礎的な研究から臨床につながるように発展し、受賞できたことで、基礎分野の科学者を勇気づけることになれば」と述べた。 【動画】ノーベル医学生理学賞 京大の本庶氏が受賞会見
今世紀中には「がんが脅威でなくなる日来る」
会見の冒頭、本庶氏は「大変名誉なこと。このような賞をいただき、幸運な人間だと思っている」と心境を語った。 以前からノーベル賞の有力候補だった。日本科学未来館の2015年の受賞予想記事でも、今回ともに受賞した米テキサス州立大のジェームズ・アリソン博士とともに、医学生理学賞候補の一人として取り上げられている。待ちに待った受賞かと記者から問われると、「賞というものはそれぞれの(賞の)団体が独自の基準で決めること。長いとか待ったとか、僕自身は感じていない」。 それよりも、趣味のゴルフで顔を合わせる男性から「あなたの薬のおかげで、肺がんが良くなってまたゴルフができる」と感謝されたエピソードを紹介し、「これ以上の幸せはない。何の賞をもらうことよりも、何よりも嬉しい」と述べ、自身の基礎的な研究が臨床を経て実際のがん患者のためになったことを喜んだ。 免疫の仕組みを解明した本庶氏の研究は、新しいがんの治療法の開発につながった。本庶氏は1992年に「PD-1」という分子を発見。この分子が免疫反応のブレーキとして大きな役割を果たしていることを明らかにした。がんに対して、このブレーキの機能を抑えることで、がんの増殖や転移を抑えられるという画期的ながん治療の理論を示した。このがん免疫治療法は実際に世界のがん患者に適応されている。 本庶氏は「免疫療法がこれまで以上に多くのがん患者を救うことになるように、もうしばらく研究を続けたい」と語った。 がん免疫治療法については、効かないがんもあり、なぜ効かないのかという研究が必要で「まだまだ発展途上」だと指摘。ただ、感染症に対するペニシリンの例を挙げ、「感染症が大きな脅威でなくなった日が(来たように)、遅くとも今世紀中には(がんにもそういう日が)訪れると思っている」と見据えた。