現在「約1%」しかない草原は“地球温暖化抑制”に効果アリ!? 東京農業大・加藤拓教授がメリットを解説
川瀬良子がパーソナリティをつとめ、日本の農業を応援するTOKYO FMのラジオ番組「あぐりずむ」。毎週火曜は、農業はもちろん、時代の先を捉えるさまざまな研究をおこなっている東京農業大学の農学研究を紹介します。5月21日(火)、5月28日(火)の放送では、土壌肥料学研究室の加藤拓(かとう・たく)教授に「土壌」「草原」をテーマにお話を伺いました。
◆“土壌”は必要不可欠な「資源」
はじめに川瀬が「そもそも“土壌”って何ですか?」と質問を投げかけると、「簡単に言うと、生物が住んでいる地面の下にある環境のことを“土壌”という言い方をしています」と加藤教授。土壌は人間が大昔から利用し続けている資源でありながら、「実は19世紀の後半になって初めて“土壌をどう取り扱っていくか?”と(研究が)始まった比較的若い学問なんです」と解説します。 そのうえで、土壌はこれからも人間が生きていくうえでずっと使い続けていかなければならない“資源”であるとし、「世界人口が増えていくなかで、土壌から採れる作物で“人が支えられている”ということを考えると、土壌というものを“いかに持続的に使っていくか”というような最適化を図っていくことが、東京農業大学に土壌肥料学研究室が存在する意義だと思って研究しています」と胸を張ります。 そして加藤教授は自身の考える“土壌学の定義”について、「さまざまなキャラクターを持った土壌があることを理解しながら、そこに住んでいる微生物が快適に過ごす方法を考え、農作物が根を張って健全に育つことができる最適な環境づくりを模索するのが土壌学かなと思っています」と話していました。
◆日本で減少傾向も…“草原”があるメリット
続いては、もう1つのテーマである「草原」について。加藤教授によると、日本の草原は大きく分けて2種類あると言い、1つは野焼きや刈取りによって草原を維持している“ススキ草原”、もう1つは牧場などの“牧草地”です。 明治・大正時代ぐらいまでは、日本の国土の約10%が草原だったと言われていますが、戦後の植林によって森林の面積が増えたことも影響し、現在は約1%にまで減少しており「明治・大正時代から比較すると(かつてあった草原の)約90%が、21世紀になってから失われてしまったと考えられています」と説明します。 しかしながら、「草原はいろんな草花が生えているので“遺伝資源としての価値が高い”ということが言われていますし、植物に共生している菌から我々人間の健康に役立つ薬の成分が発見されるといった発見が多くあります」とも。 それに加えて、「やはり“草原って我々が住む社会とって大事なものだよね”と感じる点があります」と加藤教授。そのメリットの1つとして“防災面”を挙げ、「とくに古い草原って根が土壌の深いところまで入っているし、地表を覆っている草も柔らかいので、かたくて大きい木が生えている森に比べて、土砂崩れが生じた時の災害リスクが低くて、防災機能に関しても理にかなっているのではないか言われています」と解説。 さらには、地球温暖化にも効果があるとし、「草原を維持するために野焼きをすると確かにCO2が発生してしまうのですが、焼かれてできた炭は生の状態よりも分解されずに、土壌に比較的長い時間溜まると考えられていますので、各分野でさまざまな検討がなされている地球温暖化対策の1つとして効果的なんじゃないか」と期待を寄せつつ、「草原が地球にとって大事な存在であることを、今の時代に再認識する意味でも、このポイントは大事かなと思います」と語っていました。 (TOKYO FM「あぐりずむ」2024年5月21日(火)、5月28日(火)放送より)