謎に満ちた「カメの起源」(中) 三畳紀に見られる不思議な甲羅
三畳紀カメ進化の複雑性2 「パポケリス」
そして2015年には「パポケリス(Pappochelys)」という、さらに古いカメ(または近縁の仲間と考えられる爬虫類)の化石がドイツの地層より発見された、と発表されている(Rainer等2015)。 注:Schoch, Rainer R.; Sues, Hans-Dieter (2015). “A Middle Triassic stem-turtle and the evolution of the turtle body plan“. Nature.523: 584-587. doi:10.1038/nature14472 この三畳紀中期約2億4000万年前のカメの仲間は、体長20cm程でかなりすらりと伸びた四肢をもっていた(陸生だったと考えて間違いなさそうだ)。その全身骨格化石は非常に興味深いことに、骨化した甲羅を「まるで持っていなかった」ことを示している。その代わりにかなり幅の広い肋骨がみられ、亀のようなずんぐりと丸味をおびた体型と見えなくもない。 こうした最近の世界各地におけるプロガノケリス以外の三畳紀のカメの発見は、その起源と初期進化のプロセスにおける伝統的な定説を大きく覆そうとしている。個人的には亀の起源というミステリーの結末(解答)にたどり着くというよりは、「新たな謎」を生み出している印象さえ受ける。 そしてここにもう一つ(驚愕の)事実がある。カメの起源を探究する上で忘れることのできないものがさらに古い時代――なんとペルム紀――から最近報告されているのだ。次回にペルム紀後期の不思議爬虫類「ユーノトサウルスEunotosaurus」について探究してみたい。 著者略歴:池尻武仁(博士)。名古屋市出身。1997年に渡米後、2010年にミシガン大学で化石研究において博士号取得。現在アラバマ大学自然史博物館研究員&地球科学学部スタッフ。古脊椎動物(特に中生代の爬虫類)や古生代の植物化石にもとづくマクロ進化や太古環境の研究をおもに行う。「生物40億年からのメッセージ」の記事は2016年秋より書き続けている。