大栄翔との会話で気になった年の瀬の『埼玉栄の伝統』 監督に聞いてみると「覚えていてくれて、うれしいですね」手書きの年賀状で周囲に感謝
◇記者コラム「Free Talking」 土俵上の気合みなぎる所作と激しい突き押しからは、全く想像できない柔らかな表情だった。大相撲の関脇大栄翔(31)=追手風=が、冬巡業中の支度部屋でファンの女の子からもらった手紙を読む姿に気付いた。雑談すると、手書きで思いを伝える温かみを考える時間になった。 たどたどしい「がんばって」の字を手でなぞって「もらった手紙は、大事に保管してますよ。力をもらえます」とニコニコ顔。「ただ…」と声をひそめる。この時期なら年賀状がホットだが、入門してから自身が筆を執る機会はないという。 「高校時代は埼玉栄の伝統で、年賀状のやりとりを欠かさなかったんですよ。書かなくなって頭の回転が悪くなったり、パッと漢字が思い浮かばなくなった気がします」と苦笑いした。 気になったのは「埼玉栄の伝統」。相撲部の山田道紀監督(58)に聞いた。「大栄翔が年賀状の話をしてましたか。周囲の支えにしっかり感謝する機会。覚えていてくれて、うれしいですね」 12月に入ると山田監督が年賀状を仕入れて部員たちの集合写真を印刷。手渡された教え子が、宛先と一言を添える。LINEなどで、年賀状風の画像を送る新年あいさつも増えているが「手書きの字にこそ、今の心境や新年の意気込みがにじみ出る」というのが持論だ。 山田監督が重んじる「感謝」は、OBの琴桜(佐渡ケ嶽)が大関昇進伝達式の口上で用いたように浸透している。大栄翔は「またチャンスがあれば年賀状、書こうかな」とも話していた。日本の伝統を守って前に進む姿が、力士にはよく似合う。(大相撲担当・志村拓)
中日スポーツ