医薬品が足りない…メーカー不正やコロナ禍に10月からの制度改正が追い打ち、後発薬は特に不足する恐れ
医薬品メーカーの相次ぐ不正やコロナ禍などの影響を受け、鹿児島県内はじめ全国で医療用医薬品の不足が続いている。そんな中、10月から医療費抑制を図るため、特許が切れた先発薬を選ぶ場合に後発薬(ジェネリック)との差額の一部を自己負担とする制度が始まった。県内の薬剤師からは「国内処方薬の約8割を占めるジェネリックの供給がさらに逼迫(ひっぱく)するのでは」と懸念が聞かれる。 【写真】ジェネリック医薬品の割合は増えている=鹿児島市の福元薬局
県内7店舗を展開する福元薬局(本店・鹿児島市)では先発薬、後発薬ともに風邪薬や鎮痛剤が入手困難な状況が続く。供給が滞り始めたのは2021年ごろ。患者の中には欠品のため処方が変更になる人もおり、県薬剤師会常務理事を務める沼田真由美代表取締役(54)は「薬局に対する不信につながりかねない。薬不足の背景や変更した薬の効果をしっかり説明して納得してもらうしかない」と話す。 同薬局では欠品を減らすため、早めに複数の卸業者に発注するようにしている。一方で、入荷できる時にしておこうと多めに注文するため過剰在庫になりかねない。出荷規制中の品は新規発注するのは難しく、同一グループ内で取引歴のある店舗で融通しあうこともあるという。 日本製薬団体連合会が9月に公表した調査によると、1万6845品目中、すべての注文に対応できていない「限定出荷」が1935品目で全体の11.5%、「供給停止」が1619品目の9.6%だった。合わせて21.1%が通常出荷できておらず、ジェネリックだけでみると2390品目の29.2%に上る。
不足の理由は複数ある。2020年に小林化工(福井)の製品に睡眠導入剤成分が混入したことが判明。その後大手企業でも製造上の不正が発覚し、操業停止が相次いだ。薬価改定のほか、新型コロナの流行などで解熱剤などの需要が増えた影響も指摘される。 数年にわたる供給不安に追い打ちを掛けそうなのが、診療報酬改定による10月からの変更だ。特許切れの先発薬を選んだ患者は、ジェネリックとの差額の4分の1相当を窓口で負担する。医者が先発薬を処方した場合は適用されず、患者が希望した場合のみ支払いが求められる。 県内のジェネリックの使用率は今年4月時点で88.3%。都道府県別では2番目に高い。全国的にジェネリックの需要が高まれば、供給不足が加速する可能性もある。県薬剤師会の御手洗洋一専務理事(47)は「薬が変わると不安を感じるかもしれないが、不利益にならないような処方をする。患者さんにも現状を知ってほしい」と訴える。
南日本新聞 | 鹿児島
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