「役が佐野さんに寄っていってる」ドラマ『離婚後夜』監督チームが語る佐野晶哉の魅力とは? スペシャル鼎談インタビュー
恋をすることで自分の感情を見つける、ピュアな物語に
―――タイトルと内容のギャップが大きい作品かなと思うのですが、原作や脚本を読まれていかがでしたか? 佐藤「原作は香帆が主人公で、元夫と伊織との間で揺れる葛藤が主に描かれているのですが、ドラマでは伊織を主人公にすることになり、純愛というキーワードをいただいていました。脚本を読んで、人を好きになることがどういうことかわかっていない無垢な主人公が、恋をすることで新鮮に自分の感情を見つけていく感じが回を追うごとに描かれていた部分は印象に残っています。 一方の香帆は、恐らく夫の真也としか付き合ったことがなかったと思うんです。なので、彼女は彼女で、真也以外の誰かを改めて好きになるっていう気持ちと向き合っていく。そういう意味で、2人の初恋を撮ってあげられたら、と思いました」 川和田「自分は原作を、香帆がずっと失っていた自己肯定感のようなものが伊織との出会いによって少しずつ回復していって、自分で立って生きようと思えるまでの物語として読んでいました。それはそれですごく心を打たれたんですけど、主人公を伊織としたときに、ピュアな恋愛を描こうという方針は、みんな一致していましたね。現場で撮っていてもすごくキュンキュンする場面も多くて、楽しかったです」 多賀「この作品には真也とかアカリとか、すごいことをする人も出てくるじゃないですか。だけどそれが脚本に落とし込まれたときに、原作にはなかった香帆と真也の幸せだった時間の回想などのキャラクターのバックグラウンドを足していったことで、レイヤーが深くなったんじゃないかなと感じています」
「子犬感」をキーワードに。伊織役・佐野晶哉について
―――主人公として据えられている伊織を演じた佐野さんについては、どんな印象をお持ちでしたか? 川和田「Aぇ! groupのことは知っていて、YouTubeやバラエティー番組に出ている姿は観ていました。それで佐野さんはすごく面白い人だなと。でもグループの中では一番年下だから、末っ子の可愛さみたいなものも感じていて、それを生かしたいと考えました。 原作の伊織はもう少しクールな印象もあったと思いますが、佐野さんの魅力を前面に出すためには、本人がそもそも持ってる子犬感みたいなものにフォーカスしていくのがいいと思ったんです」 ―――本読みのときに監督から「子犬感」というワードが出たと佐野さんがコメントされていましたが、これは川和田さんからだったんですか? 川和田「いや、これはわたしじゃないですね(笑)」 多賀「本打ちのときから出ていたワードではあって、誰からともなく伝わったんだと思います」 ―――実際にこの「子犬感」はイメージ通りにいっていますか? 川和田「撮影を重ねるごとにどんどんそうなっていっていった感じはあって、役が佐野さんに寄っていってるなと思いましたね」 ―――佐野さん演じる伊織のシーンでいうと、栗ご飯を口いっぱい食べているところがすごく可愛かったなというのが印象に残っています。セリフも聞き取れるかどうかギリギリだったんじゃないかと思うのですが、そういう生っぽさも作品の味になっているなと感じました。 川和田「自分はそもそもそういう生に近い演出が好きで、あのシーンも『栗ご飯をいっぱい食べてください』とアイテムを渡して、どうやってくれるかを見ながらつくっていきました。現場でも聞き取れないかなと思って、聞き取れるバージョンもやったんですけど、やっぱりあっちのほうがよくて(笑)。偶発的に生まれたものではありますが、そういう瞬間をどうつくっていけるかを考えるのが好きですね」 ―――そのあたりのつくり方みたいなものは、お三方で事前に話し合われたりしたんですか? 多賀「言葉にはしてないけど、3人とも生っぽいものが好きだったのかもしれないですよね。だから多分、どの話にもそういう瞬間は映っていると思います」 佐藤「最初の本読みのときに、コメディかリアリティの2つに分けるとしたらリアリティの方向で作ろう、という話はしていて。ただ、あまりリアルを突き詰めていくと暗くなってしまうところもあるので、可愛さみたいなところで幅ができるといいなと思っていました。そこはやっぱり佐野さんの明るさで、伊織を複層的にしてくれたと思います」 川和田「あくまで伊織として佐野さんの良さを入れてもらうのがいいなとは思ってますが、たまに本当に佐野さんがグッと出てくる場面もあるかもしれない。なので、ファンの方にとっては、いまの佐野さんだ!と思う場面もきっとあると思うんですけど、そういう部分も含めて楽しんでもらえたらうれしいですね」