「発達障害で認知症?」小学生の頃に戻った義母の看取りで感じたこと
人は誰でも年を取り、そしていつかは天国に旅立つ。 だからこそ、介護や看取りは、国民全体の問題だ。 【マンガで見る】ADHDの夫の「謎行動」妻が観察してわかった「法則」 厚生労働省の介護事業状況報告(暫定)によると、令和6年1月末の時点で要支援・要介護認定を受けた人の数は706.7万人で、うち男性が225.4万人、女性が481.2万人となっている。うち65歳以上の認定者は約19.3%だ。ちなみに2年前、令和4年の1月は689万7195人。10年前の平成24年1月の時点では525万404人。年々増加している。 2023年の年末に認知症の義母を看取ったというのが、上松容子さん。上松さんは暴力的な言動も含めて義母の謎の行動に長く苦悩してきた。認知症発症のときには同居をしたが、そこである医師に「発達障害だったかもしれませんね」と言われ、様々なことが腑に落ちたという。 前編ではこれまでと、医師に指摘されて腑に落ちた経緯、2021年に施設に入所してからのことをお伝えした。暴力的な発言もあった義母だが、施設では人が変わったようにおとなしくなっており、自身の小学生の頃の記憶までしかわからなくなってきたという。ではどのように旅立ちを看取ったのだろうか。 ---------- 容子 20代後半で結婚。現在50代 夫・K 容子と同い年。営業職 娘・A 容子と夫の一人娘 実母登志子 昭和ヒト桁生まれ 元編集者を経て専業主婦。認知症で要介護2 義父 東京近郊在住 大正生まれ 中小企業社長 義母トミ子 昭和ヒト桁生まれ 元看護師 専業主婦。数年前から認知症の傾向で2021年に要介護1認定 ----------
「小学生の自分」の義母から表情が消えた
2020年ごろから義母が認知症の要介護2に認定され、施設に入所、その後、さらに要介護3に更新された。記憶が消えていくのに伴って、義母・トミ子の言葉が出なくなっていった。2022年の秋ごろ会いに行ったときは、物の名前が出てこず、口をつぐんでしまうことがあった。あいさつすることもできなかった。それでも、終始ニコニコしていたから、人が会いに来たことはうれしかったようだ。 ところが、昨年の3月、誕生日のお祝いをしようと施設を訪問したときには、様子がすっかり変わっていた。 無表情でこちらを呆然と見つめている。 それまで、施設に入ってからも毎年誕生日にはブーケを渡していて、その瞬間は驚いたような明るい表情になった。そっと大事そうに腕に抱え、花に顔を寄せる。花というのは、これほど人を喜ばせるものなのかと、感動すら覚えたものだった。 ところが、昨年の反応はまったく違っていた。渡した花束を、腕をまっすぐ伸ばし、棒を持つように縦に握ったままなのだ。何を渡されたか、その意味をぜんぜん理解していないようだった。 車いすを押してきた職員が、「トミ子さん、お誕生日おめでとう。お花綺麗ねえ」と声をかけても、硬い表情が緩むことはなく、腕も伸ばしたままだった。トミ子にとっては、お祝いの花さえ、ただの「物体」になってしまったのかもしれない。 トミ子は私にとって異星人のように感じる人物だったが、とうとう本当に、異次元の住人になったような気がした。