農林中金の巨額損、金融庁からの指摘生かせず-遅きに失した転換
(ブルームバーグ): 金融庁は農林中央金庫の有価証券運用における外国債券への依存度の高さにリスクがあると指摘し、長年改めるよう促してきた。
米リーマンショックを受けた2009年3月期に保有する証券化商品の減損処理によって5721億円の最終赤字に陥った結果、相対的に安全資産とされる米国債への投資を拡大、金利が上昇(債券価格は下落)してもポートフォリオの迅速な見直しを行わなかった。
収益性の悪化した10兆円規模の外債売却に踏み切ることで、今期(25年3月期)の連結純損益は1兆5000億円の赤字と、わずか1カ月前の予想と比べて3倍に膨らむ見通しを示した農林中金。奥和登理事長は21日、都内で開いた総代会後に記者団に対して「金融環境次第」ではさらに赤字幅が膨らむ可能性を否定しなかった。
「想定と異なる方向にマーケットが動いた時は、早めの処理が必要だ」とブルームバーグ・インテリジェンス(BI)の伴英康アナリストは指摘する。農林中金についても「後講釈にはなるが、もう少し早めに決断をした方が良かった」と述べた。
巨額資産ゆえに
金融庁で金融機関のモニタリングを担当する屋敷利紀審議官によれば、同庁は農林中金に対して収益源の多様化を促してきたというが、「ポートがあまりにも大きいため、なかなかそう簡単に変えられるものではなかったと認識している」と振り返った。
農林中金の広報担当者は「金融庁とは投融資方針を含め、しっかりと監督指導を受けながら今日まで財務運営を行ってきている。今後についても、金融庁としっかり対話しながら、監督指導を踏まえた財務運営を行っていく」と電子メールで述べた。
また、坂本哲志農水相は21日の会見で「引き続き金融庁とも連携し、金融市場の動向を踏まえつつ、農林中金の経営について十分注視していく」と語った。
農林中金の独特のビジネスモデルが今回の損失を招いたともいえる。非上場であり、農業協同組合(JA)をはじめとする約3400の団体から資金を預かり、投資運用益を還元している。