「需給ギャップ」の数字を低く見積もる内閣府の「策略」 高橋洋一が解説
数量政策学者の高橋洋一が1月9日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。1月5日に発表された12月の米雇用統計について解説した。
アメリカの12月の雇用統計、就業者数が21万6000人増加
米労働省が1月5日に発表した2023年12月の雇用統計によると、非農業部門の就業者数は前月から21万6000人の増加となり、17万人程度を見込んでいた市場予想を上回った。また、失業率は前月と同じ3.7%だった。 飯田)これで円安に振れるなど、いろいろあったようですが、アメリカの景気はまだまだ強いのでしょうか?
重要なのは「失業率の下限を達成しているか、していないか」 ~下限を達成していればあとは賃上げだけ
高橋)NAIRU(Non-Accelerating Inflation Rate of Unemployment)という概念があります。「インフレを加速しない失業率」という言い方をしますが、簡単に言うと「失業率の下限」というような話です。「下限はどこか」を見ながら金融政策を行うのですが、アメリカの場合、普通に計算すると4%を切るぐらいのところが失業率であれば、「NAIRUになっている」と計算できるのです。この数字は中央銀行の人に聞けば、「いくらです」と必ず答えるような話なのです。 飯田)NAIRU(インフレを加速しない失業率)。 高橋)このぐらいになると、さすがに雇用がよくて賃金が上がります。だから日本もその数字を計算して、目指せばいいのです。日本だとだいたい2.5%を少し切るぐらいでしょうか。日本の場合、もう少し景気対策や金融緩和を行えばいいと思います。もうすぐ到達する手前になっているのだけれど、なぜか躊躇しているのです。このNAIRUという考え方は普遍的だから、これで説明したらいいのですよ。要するに「失業率の下限を達成しているか、していないか」です。下限を達成していれば、あとは賃上げだけです。
インフレを加速しない最低の失業率 ~その数字に近いアメリカ
飯田)失業率が下がっていくということは、裏を返せば人手不足なのですよね。あまり下がりすぎると、今度は人手が本当に足りず、賃金が上がり、それによって物価が上がってしまう。 高橋)その境界線であり、NAIRUの“Non-Accelerating”は「インフレを加速しない」ということです。「インフレを加速しない最低の失業率」なのです。 飯田)インフレが加速せずに失業率が下がれば、いちばん居心地がいい状態だと。 高橋)そこを狙うのが普通です。そう考えると、アメリカはいまNAIRUに近い。日本の場合、「もう少しプッシュしないとダメ」と読めます。アメリカはすごくいい数字なので、「アメリカはFRBがうまいことやったな」という感じがしますよね。