『蒲田行進曲完結編・銀ちゃんが逝く』再演が決定 今回は「春錦匠による初演」なのだ
【ノマドの窓~渡る世間はネタばかり~】 舞台「蒲田行進曲完結編・銀ちゃんが逝く」が7月3日から12日まで、東京・浅草花劇場で再演される。〝再演〟と書いたが、つかこうへい作のこの作品は初演以来、何百回と(もっとか)公演されているので、正しくは「演劇ユニット春匠(はるたくみ)による『蒲田行進曲完結編・銀ちゃんが逝く』が再演される」だ。 いや、実はそれも正確ではなくて、今回は「春錦匠(しゅんきんしょう)による初演」なのだ。チラシの左上隅にある三文字に要注目!ここ大事。 昨年秋に当コラムで書いたことの繰り返しになるが、まずは基本的な説明を、いま一度。 まず〝春匠〟がある。俳優で演出も手掛ける春田純一が、女優でプロデュースも担当する大下順子と手を組んで立ち上げた演劇ユニットのことだ。これは「春田組」を文字った創作熟語で実にうまい。 前回はこの春匠が製作を担い「函館・五稜郭の石の階段落ち」を演ってみせたのだった。その演出を担当し、自らも出演したのが錦織一清で、長年に渡って培った〝つか芝居スピリット〟を120%注ぎ込んだ渾身の舞台では、連日満員の観客をその芝居の虜(とりこ)にしてみせた。 その公演の席を確保することができなかった人も多く、なおかつ「芝居そのものをもっとブラッシュアップして届けたい」という思いもあり、春匠と錦織の新しいユニット名が生まれた。それが(春匠に錦を合体させた)〝春錦匠〟というわけである。 そのフライヤーには前回の舞台写真が使われている。中央にある階段がこの芝居の象徴である。前は、これができあがっていない時点での記事だったので「どんな石段が舞台に現れるのか楽しみだ」と書いたのだが、今度はそれがチラシのメインイメージになっている。 これ、ただの階段ではない。演劇界の大道具にこの人ありと知られる浦野正之氏による作品で、これがいろんな姿に変わり、それぞれのシーンを彩っていくのだ。 膨大なセリフ、そして芝居空間から発せられる熱量に圧倒される、とはよく言われるが、その合間にしれっと立ち上がるリアルな冗談、素の会話、その瞬間だけのアドリブ……そこが楽しい。そしてそれは、つかこうへいの元で鍛えられた〝つか役者〟にしかできない芸当だ。