「メタル界のバックストリート・ボーイズ」ブラインド・チャンネル、想像を遥かに超える初日本公演
大きな意味をもつ初来日に
ショウが終盤に至っても場内の熱気は高まり続け、フロアにはサークルピットも出現。火に油を注ぐかのようにオーディエンスを煽るメンバーたちの表情はいずれも歓びに満ちていて、「ココニ、キテクレテ、アリガト!」といった日本語まで飛び出した。そして、お馴染みの異名の由来を示すかのようにバックストリート・ボーイズの「エヴリバディ」のカヴァーを、まさしくボーイズ・グループを思わせる軽快なステップと共に披露してみせる。余談ながら、このバンドに対する「メタル界のバックストリート・ボーイズ」という形容は、そもそもは彼らに対する揶揄から生まれたものであるらしい。つまり若さゆえに「ロック・バンドというよりボーイズ・グループ」と皮肉られた時代があったということなのだろう。しかし彼らはそれを逆手に取り、自分たちのアイデンティティの一部として消化してみせたわけである。そんな心意気も頼もしい限りだ。 そして最後の最後には、このバンドの名前をフィンランドから世界へと広める切っ掛けとなった「ダーク・サイド」が炸裂。腐った現実に対して中指を立てることを促す内容でありながら、2021年度のユーロヴィジョン・ソング・コンテストで6位入賞を果たしているこのポップかつヴァイオレントな楽曲の痛快さは(ちなみに同年の優勝者はマネスキンだった)、この熱い夜の締め括りに相応しいものだった。 すべてにおいて満足度の高い、想像を遥かに超えるライヴだったが、ひとつだけ残念だったのは、今回の来日公演がたった1日限りのものだったことだ。仮に翌日に追加公演が組まれていたならば確実にリピーターが続出していたことだろうし、その若々しくも経験値の豊富さを感じさせるライヴ・パフォーマンスは(ちなみにこの5月はP.O.D.の北米ツアーに同行)、大型フェスなどでもきっと映えるはずだと思えた。加えて彼らの音楽やライヴ・パフォーマンスには、同時代的な日本のラウド・ロックとの親和性の高さも感じられる。シンプルに言えば、間違いなくもっと大きくなっていくはずのバンドだということだ。今回の東京公演は、ブラインド・チャンネルのこの先の物語において決して小さくない意味を持つことになるはずだし、この規模の会場で彼らのライヴを目撃できたこと自体がとても貴重だったのだと思わずにいられない。(増田勇一)
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