【Playback箱根駅伝】第72回/古豪中大 32年ぶりの優勝! V候補・山梨学大、神奈川大が4区途中棄権の波乱
2024年に箱根駅伝は第100回大会を迎える。記念すべき100回に向けて、これまでの歴史を改めて振り返る『Playback箱根駅伝』を企画。第1回大会から第99回大会まで、大会の様子を刻んでいく。(所属などは当時のもの) 第72回箱根駅伝総合成績をチェック
第72回(1996年/平成8年) 早大が2区・渡辺康幸の区間賞もあり往路V 東海大が過去最高の4位
出雲駅伝、全日本大学駅伝でいずれも上位を占めた中大、早大、山梨学大、神奈川大が優勝候補に挙げられた第72回大会。前回出場校の中央学大が3年ぶりの予選会敗退を喫した一方で、法大が2年ぶりに本戦出場を果たした。 1区は混戦模様から予選会個人トップだった亜細亜大のビズネ・ヤエ・トゥーラ(4年)が残り600mで抜け出し、大学史上初めて鶴見中継所をトップ通過。優勝候補の4校は早大が9位、中大が11位、神奈川大が14位、山梨学大が最下位(15位)と出遅れた。 2区では強力なエースを置く早大と中大が驚異のゴボウ抜きを見せた。早大は前回この区間で1時間6分48秒の新記録を樹立した渡辺康幸(4年)が再び快走。自身の持つ区間記録には6秒及ばなかったものの、8人抜きの区間賞で首位に躍り出た。中大も松田和宏(3年)が9人抜きの区間2位で2位に浮上。最後方からのスタートとなった山梨学大のステファン・マヤカ(4年)は、一時6位まで順位を上げたものの、終盤で失速し、9位でのタスキリレーとなった。 3区では早大が首位の座を守った一方で、神奈川大は高津智一(2年)が区間賞の快走で2位へ、山梨学大も中馬大輔(2年)が区間2位の走りで3位へ押し上げた。 4区では、今大会最大のハプニングが発生した。前年の世界選手権マラソン代表の山梨学大・中村祐二(3年)と神奈川大・高嶋康司(2年)が脚を痛めて無念の途中棄権。1大会で複数の大学がリタイアするのは史上初の事例で、まさかのかたちで山梨学大は3連覇の夢が潰えることになった。 2区以降、首位をひた走った早大は5区の小林雅幸(3年)が1時間10分27秒の区間新記録を樹立し、2年連続の往路優勝。4区・榎木和貴(3年)の区間賞で2位に浮上した中大が2分15秒遅れの往路2位。3位の東海大とは約4分の差をつけ、総合優勝争いは名門2校に絞られた。 6区では中大の工藤利寿(3年)が区間賞の走りで早大を逆転し、16秒のリードを構築。7区で5秒差まで迫られたものの、中大は8区の川波貴臣(4年)が前回大会で1学年下のチームメイト・榎木和貴が樹立した区間記録を15秒更新する1時間5分48秒でその差を2分21秒まで拡大。9区と10区も安定したタスキリレーで逃げ切り、32年ぶりとなる最多14度目の総合優勝と復路優勝を手にした。 早大は3年連続の準優勝。苦手の山下り(6区)で区間12位と低迷したのが響いた。混戦の3位争いは前年まさかの途中棄権に泣いた順大が制して2年ぶりのトップスリー。東海大が過去最高の4位、低迷を続けていた大東大が4年ぶりの好成績となる5位に食い込み、前回予選落ちに泣いた法大も6位へジャンプアップした。7位の亜細亜大は20年ぶりのシード権獲得だった。 シード権争いも熾烈を極めた。9区終了時点で9位の専大と10位の日体大との差は2分32秒。ところが、専大の鈴木利弘(4年)が脱水症状に陥り、みるみるうちにその差が縮まる。日体大の宇野淳(2年)は区間5位の好走で逆転を決め、かろうじてシード権を死守。専大は5年ぶりにシード落ちとなった。 4区で途中棄権となった神奈川大は3区の高津、7区の渡邊聡(1年)、9区の重田眞孝(4年)と3人が区間賞を獲得。総合成績は参考記録となったが、翌年の逆襲を予感させる復路2位の継走を見せた。 参考文献:箱根駅伝90回記念誌(関東学生連盟)
月陸編集部