「夜仕事の女性」に金融知識を 元キャバ嬢でFPの村上さん(熊本市)、セミナー開催で支援
元キャバクラ嬢でファイナンシャルプランナー(FP)の会社員、村上宏子さん(40)=熊本市西区=は「夜の仕事」で働く女性を支援する活動に取り組んでいる。「金銭感覚がずれて昼の仕事で長続きしない人が多い。セカンドキャリアを応援したい」。お金に関する知識や判断力を示す金融リテラシーの大切さやライフプラン設計の考え方を伝えている。 「銀行、証券会社、保険会社にはお金を増やしたり守ったりする役割があります。バランス良く活用することが理想の資産形成になります」。18日夕、熊本市中央区のびぷれすイノベーションスタジオから発信したオンラインセミナーで参加者17人に語りかけた。 夜の仕事に従事する女性の多くは個人事業主で、確定申告が必要だ。セミナーでは、日頃の「同伴」で使う交通費や客へのプレゼント代など仕事に絡んで発生する費用の多くが、経費として認められる可能性があることを紹介した。さらに結婚、出産、病気など人生の転機に安心して生活ができるよう、ライフプランを考える必要性を訴えた。
熊本市出身。家庭の事情で1人暮らしを始めた中学時代に不登校になり、高校は中退した。通信制高に通いながら、18歳から21歳まで夜の店で働いた。「毎日遊んでばかりで貯金はなかった」と振り返る。 ただ、3年半で培った企業の上役や幅広い職種の客との人脈は大きな財産になった。〝夜の蝶[ちょう]〟向けのドレスショップを経営するなど、21歳から17年間で3社の事業を立ち上げ代表を務めた。 今の活動を始めたのは、夜の仕事を辞めた若い女性が金銭問題で苦労する姿を見てきたからだ。2022年度から高校で金融教育が必修となるなど、世間ではお金の知識の必要性が高まっているが、「一時的に収入が多い『夜職の女性』に情報を提供している人がいない」と感じた。「夜も昼も経験した私が力になりたい」と決意した。 38歳の時に保険代理店に転職し、乳がんを患った。抗がん剤の影響で、経過観察中の現在も頭頂部の髪が薄く仕事中はカツラを着ける。体がだるい日もある。それでも夜の仕事で培ったコミュニケーション能力と努力が実を結び、営業成績はトップクラスだ。今年1月にFPの資格を取った。
「波瀾[はらん]万丈の人生」と言われることがあるが、常に前を向いて挑戦し続けてきた。「夜の仕事のおかげで今の人生がある。私の経験を伝えて、一人でも多くの女性に幸せになってほしい」と願う。(後藤幸樹)