羽ばたけ、北奥羽中学生アスリート
今年は「巳年」。蛇は脱皮を繰り返して成長することから再生の年とされる。新しい自分に生まれ変わる、絶好の一年になりそうだ。 将来、世界へ羽ばたく可能性を大いに秘めた中学生アスリートにとってもさらなる成長を期す一年。北奥羽地方出身の若きアスリート3人の姿を紹介する。 「巳(み)年」は努力してきたことが「実(み)を結ぶ」、アスリートにとっては縁起のいい年。北奥羽地方の中学生3人は昨年、それぞれ世界を舞台に戦い、好成績を収めた。さらなる飛躍を誓う3人が新年の目標や将来の夢を語った。 ---- ◇ ---- ◇ ---- 【水泳・佐々木珠南(八戸東中3年)】28年ロス五輪期待の新鋭 水泳女子の八戸市立東中3年の佐々木珠南(15)は2028年のロサンゼルス五輪出場が期待される新鋭だ。昨年は自身2度目の国際大会で見事に入賞を果たし、大きな自信を得た。高校進学を控える新年、「3月の日本選手権で良い記録を出し、8月の世界ジュニア選手権に出場したい」と力強く語る。 北海道に住んでいた2歳から兄の影響で競技を始め、小学4年で八戸へ転居。フィットネスクラブウイング八戸の小田桐勇人コーチの下でめきめきと力を付け、全国大会で結果を出すようになった。 最初は平泳ぎ専門だったが、「あまり伸びなくなってきた」ので、200メートルと400メートルの個人メドレーに軸を移し、全国中学校体育大会やジュニアオリンピックカップで頂点に立った。 メドレーの魅力は「人によって得意な泳法が違い、誰が勝つか分からないところ」。一つ目のバタフライは体力を温存するのが一般的だが「最初は同じように泳ごうとしたけど、突っ込んでいってしまう」ため、逃げが自身のスタイルとなった。 昨年8月にオーストラリアで開催されたジュニアパンパシフィック選手権は転機に。各国の上位2人が決勝に進む特殊ルールの下、400メートルを3位で表彰台に上った。 「日本の大会と違う緊張感があったけど楽しめた」と佐々木。最近はレース前に不安より「絶対に負けないという気持ち」が上回るようになり、競技にさらに夢中になっている。 一方、昨年11月29日~12月1日に東京で開催されたジャパン・オープンは200メートルで準優勝したが、主眼に置いていた400メートルは予選で失格に。得意の平泳ぎでダウンキックを取られた。 現在の課題は最後の自由形まで持たせる体力。25年の世界ジュニア出場に向け、「練習から決められたタイムで泳ぎ、体力を身に付けたい」と、競技の楽しさと悔しさを感じた昨年を糧に成長を誓う。 【ささき・しゅな】 2009年6月生まれ。八戸市出身。市立白銀小―東中3年。主戦場の200メートル、400メートルの各個人メドレーなど、女子の青森県記録を数多く保持する。身長169センチ。高校進学後の夢は中学3年間、大会で一度も出られなかった文化祭への参加。 ---- ◇ ---- ◇ ---- 砂涼人 【野球・砂涼人(大野中3年)】W杯で深めた自信胸に 昨年8月にコロンビアで開催された第6回世界野球ソフトボール連盟(WBSC)U―15ワールドカップ(W杯)。洋野町立大野中3年の砂涼人(15)が侍ジャパンの一員として出場し、日本の初優勝に大きく貢献した。軽快なフットワークやグラブさばきなど、抜群の守備センスを誇る内野手。今後のさらなる飛躍が楽しみな逸材だ。 守備の原点は自宅前で毎日のように続けた壁当てにある。父善克さん(46)によると、4歳の頃には既に白球に触れていたという。「地面は砂利なので、毎回バウンドが違う。一日中、飽きるまでやっていた」(涼人)。雨の日は屋内の階段に向かってボールを投げて捕球を繰り返した。難しいバウンドの打球をいとも簡単に収めるグラブさばきは、こうして養われた。 地元の軟式野球チームやリトルシニアで着実に力を伸ばして日本代表入り。W杯では9試合中7試合に出場し、13打数3安打8四死球。初戦のドミニカ共和国戦では2安打2打点と活躍し、守備でも堅実なプレーを見せた。 一方で課題も。チャイニーズ・タイペイ戦では自身のタイムリーエラーなどで流れを悪くして逆転を許した。「大事なところでのミスをなくさないといけない」と反省を口にする。 春からは高校生。現時点での目標は高卒でのプロ入りだ。「レベルの高い環境に身を置き、そこで競争に勝っていきたい。高校では日本一を目指す」。世界で深めた自信を胸に、今度は新たなステージに挑む。 【すな・りょうと】 2009年5月生まれ。洋野町出身。町立帯島小―大野中3年。中学に入ってから洋野リトルシニアでプレーする。遊撃手。右投げ右打ち。168センチ、60キロ。 ---- ◇ ---- ◇ ---- 工藤夏姫 【ゴルフ・工藤夏姫(根城中1年)】大舞台で輝く勝負強さ 昨年7月、米国カリフォルニア州サンディエゴで開かれたIMGA世界ジュニアゴルフ選手権。女子11、12歳の部に出場した八戸市立根城中1年の工藤夏姫(13)が、劣勢の試合を立て直して4位に食い込んだ。トップゴルファーへの登竜門とされる大会での好結果。「最後まで諦めず、よく戦えた」と充実感たっぷりに振り返る。 昨春の世界ジュニア選手権日本代表選抜大会東日本決勝では、苦手としているアプローチなどのショートゲームがさえ、「一番いいゴルフができた」。勝負強さを発揮して頂点に立ち、自身初めての世界切符をつかんだ。 迎えた本番。同部門には約90人が参加。初日は、周囲との会話がほとんど英語という慣れない環境で「メンタルがやられてしまった」という。全体的に風を読み切れなかったり、ドライバーが曲がったりして出遅れた。 それでも気持ちを切り替え、以降は自分のプレーに集中。「バーディーが多く取れてパターもよく入った」。2日目に67、最終日には69と見事な巻き返しを見せた。 5位以内を確保し、「次回世界ジュニアのシード権獲得」という目標もクリア。「次は優勝を目指す。練習量を増やし、トレーニングを頑張ってパワーを付けていきたい」と新たな意欲をみせる。 将来の夢は、もちろんプロゴルファーだ。「高校3年生でプロテストに一発合格したい。22歳の頃には世界を舞台に活躍できるようになれれば」。自身の姿をくっきりと思い描く。 【くどう・なつき】 2011年8月生まれ。八戸市出身。市立田面木小―根城中1年。151センチ。おいらせ町の柳本泰成プロの下で技術を学ぶ。