酪農家1万戸割れ 15年間で半減 餌が高騰、経営悪化
将来的に乳製品向け不足か
中央酪農会議(中酪)は2日、全国の指定生乳生産者団体(指定団体)が生乳販売を受託する酪農家の戸数が初めて1万戸を割ったと発表した。15年前と比べると、半減したことになる。飼料高騰や牛乳・乳製品の消費減退による経営悪化などから、離農に歯止めがかからない。酪農基盤の危機的状況から、有識者は持続可能な酪農経営に向けた支援が必要と訴える。 中酪によると、10月の指定団体受託農家戸数は、全国で9960戸と1万戸を下回った。5年間で24%(約3000戸)の大幅な減少だ。北海道は前年同月比4・4%減、都府県が同6・7%減とともに減少が進む。 輸入飼料への依存度が高く、生産コストの上昇が経営悪化の要因となる。生乳1キロ当たりの生産費を見ると22年は111円で5年前より25%増加。生乳価格も上昇しているが、生産コスト増加のペースに追いついていない。 中酪が酪農家に実施した調査によると、現在の酪農経営環境を「悪い」と回答した割合は8割強に上った。9月の牧場経営について、6割が赤字と危機的状況にあり、全体の5割近くは離農を検討しているという。 酪農家の離農に加えて、後継牛も減少している。Jミルクが9月に公表した4~7月の乳用雌牛の出生頭数は北海道が前年同期比5%減、都府県が同9%減といずれも前年を下回って推移。25年度以降は生乳生産の主力となる2~4歳の頭数減少を見通す。 指定団体以外も含めた23年度の生乳供給量は約728万トンだが、27年度には700万トンを割る予測を立てる。飲用向けが足りても、乳製品向けは、将来的に需要を賄えなくなり、今以上に輸入に頼る状況が訪れると警鐘を鳴らす。 北海道大学大学院農学研究院の小林国之准教授は「持続可能な酪農経営に向けて、地域に合った経営構造への転換支援が求められる。消費者との対話と理解醸成が必要」と指摘する。
日本農業新聞