「極右の蠢動」に合流する韓国与党…逮捕妨害し、憲法裁と警察に全方位圧力
大統領弾劾訴追案の可決後、低姿勢を保ち世論の流れを探っているように思われた与党「国民の力」が、抑えていた「極端な保守色」をあらわにしている。所属する国会議員は集団で大統領官邸前の極右デモ隊のもとを訪れて逮捕状執行の阻止をあおり、党指導部は弾劾審判が進められている憲法裁判所を訪れて弾劾の却下を迫った。内乱を首謀した疑いが持たれている尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領が捜査機関の出頭要求と逮捕状の執行に抵抗して「官邸籠城」を繰り広げている間に、国民の力内部の親尹錫悦系議員たちが主導して作り出した退行的な流れだ。 国民の力のクォン・ソンドン院内代表は6日、重鎮議員と憲法裁判所を抗議訪問後、記者団に対し、「国会の弾劾訴追は(もはや)成立しない。憲法裁は弾劾を却下すべきだ」と述べた。国会弾劾訴追委員団が弾劾審判を迅速に進めるために憲法裁と協議し、刑法上の内乱容疑を弾劾事由から除外することを決めたことを問題視したのだ。クォン院内代表は、自身が国会弾劾訴追委員長を務めた2017年の朴槿恵(パク・クネ)元大統領の弾劾審判の際、主要犯罪だった収賄罪を迅速に審判を進めるために除外したことについては、「収賄罪が枝葉末節的な事由だったあの時とは異なる」とごまかした。同時刻には元警察のイ・チョルギュ、イ・マンヒら国民の力の議員が警察庁を抗議訪問した。 指導部と所属議員たちが憲法裁と警察に全方位的な圧力をかけている間、キム・ギヒョン、イム・イジャ、パク・ソンミン、ク・ジャグン、カン・ミョングらの40人あまりの親尹系議員は、ソウル漢南洞(ハンナムドン)の大統領官邸前に集まり、高位公職者犯罪捜査処(公捜処)による逮捕状執行の阻止にあたった。元判事のキム・ギヒョン議員は官邸前で、「刑事訴訟法には、国家保安施設に対しては管理者の承認なしには家宅捜索できないという明示的条項があるにもかかわらず、判事は自分勝手に家宅捜索できるという例外規定を入れて令状を発行した。瑕疵(かし)が重大で明白なのだから、当然にも(令状は)無効」だと声を強めた。1週間前にはクォン・ヨンセ非常対策委員長が「非常戒厳と大統領弾劾で不安にさせ、心配をおかけしたことを、国民のみなさまに深くおわび申し上げる」と述べているが、その時の姿勢とは180度異なる。 国民の力の指導部は、議員の官邸集会への参加は「個人の判断」によるものだとして一線を引いたが、指導部の考えも彼らと違いはないようにみえる。クォン・ヨンセ非常対策委員長はこの日の非常対策委員会で、「公捜処は、内乱罪の捜査の法的根拠がないのに無理に令状の発給を受け、執行を強行しようとしている」と述べて、官邸前の「議員デモ隊」を擁護した。親尹系のある議員は「支持層が結集して雰囲気が変わった。今のような世論の流れだと、憲法裁で弾劾棄却決定が出ることもありうると思う」と述べた。 実際に国民の力の議員たちは、いくつかの世論調査で12・3内乱後に急落していた党の支持率が回復を示していること、検証されていない一部の調査では尹錫悦大統領の支持率が予想より高い値を示していることで、勢いづいている雰囲気だ。国民の力の議員たちは前日、尹大統領の支持率が異常に高い値を示した群小調査機関の世論調査結果を共有しつつ、「少しだけ耐えて努力すれば雰囲気の反転もありうる」という意見をやりとりしているという。匿名のある世論調査機関の代表は、「政治的意図に沿って問いが設計された偏向した世論調査の結果を共有することで、議員と強硬支持層が集団幻覚に陥っているようだ。間もなく現実を自覚する時が来るはずだが、そうなった時にどんな政治的無理をしようとするのかが心配だ」と述べた。 外部に表出する反動的な流れは「内部離脱者」に対する弾圧と同時に現れている。ユン・サンヒョン議員は今月4日、フェイスブックに、大統領弾劾訴追案が可決された際に党内から12人の離脱者が出たことに言及しつつ、「(内乱罪を事由から除外した弾劾訴追案に賛成するかどうか)立場を明らかにせよ」と迫った。弾劾案に賛成票を投じたキム・サンウク議員はハンギョレの電話取材に対し、「民主主義を守るかどうかという『正しいか正しくないか』の問題を『陣営争い』の問題に変質させた。党は弾劾賛成派を迫害することで、異なる主張ができないようにしている」と述べた。同じく「弾劾賛成派」だったチョ・ギョンテ議員も、「わが党の名が国民の力だということを肝に銘じなければならない。国民の力は違憲な非常戒厳をおこなった尹大統領から発するのではなく、国民から生じるのだ。王政時代でもあるまいし、(なぜ官邸の前に集まって)王をあがめるかのように行動するのか分からない」と述べた。 国民の力の主流が示す反動的態度の根底には、徹底した政治的私益追求の欲望がある、というのが専門家たちの分析だ。党のヘゲモニーを握る嶺南(ヨンナム=慶尚道)圏の議員たちは、多くの国民の世論とかけ離れた党の中心支持層の感情に便乗した方が議員職と党内権力を維持するのに有利だと判断している、というのだ。嶺南大学のチョン・ビョンギ教授(政治学)は、「党指導部には尹大統領と同じ船に乗っている人が多い。弾劾を簡単に認めることになれば国民の力という政党は存在できなくなるため、今の状況を推し進めているのだ」と述べた。 ソ・ヨンジ、チョン・グァンジュン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )