移設だけじゃない!?名古屋駅前モニュメント悲運の歴史
2027年開業予定のリニア中央新幹線の工事が着工し、名古屋駅周辺も大きく変わりつつある。JPタワー名古屋や大名古屋ビルヂングといった高層ビルが続々と誕生する中、先日こんなニュースが話題を集めた「名駅モニュメントがリニア工事にともない移設へ」。名古屋駅桜通口前のロータリーにあるこのモニュメント。ニュースで初めて「飛翔」という名前を知った地元民も少なくない様子だ。林立するビルに埋没し、ついには移設となってしまう「飛翔」。その「悲運」とも言いたくなる歴史をおさらいしてみよう。
市制100周年の駅前再整備で華々しくデビュー
名古屋駅前にそびえる「飛翔」がお目見えしたのは、今から四半世紀さかのぼる1989年。名古屋市制100周年となるこの年には、名古屋市内3つの会場で世界デザイン博が開催。駅前も整備されることとなり、ロータリーの中央にも新しいモニュメントが設置されることになった。 109点の応募作品から選ばれたのがこの「飛翔」であり、「過去から未来への発信」をテーマに、ステンレスパイプを使って縄文式土器の縄のイメージをして渦巻き型に組み上げられた。その規模、高さ21m、底の直径23メートル。 1989年は、ツインタワーのJRセントラルタワーズが竣工する10年前にあたり、当時の駅前には旧大名古屋ビルヂング(現在は新大名古屋ビルヂングが竣工)や、毎日ビル(現在のミッドランドスクエアの場所)といった、“ワイド”なビルが並んでいた。そこに現れた近未来的なモニュメントは、しっかりとした存在感を示し、まさに未来の名古屋、これからの名古屋を象徴するものだった。
噴水やライトアップの中止、さらにはよじのぼり事件まで
華々しいデビューを飾った「飛翔」だったが、以降は不遇の時代を過ごすことになる。そもそもこのモニュメントには噴水の機能が備わっており、デビュー当時は頂上からゆるやかに水が流れ落ちていた。しかし、ロータリーを走る車から「水しぶきがかかる」という声があがり、2001年には噴水機能を停止してしまう。 また光ファイバーのケーブルも通っており、夜間にはライトアップをされていたが、照明機器の不具合をきっかけにこちらも数年前に中止に。 それでも、独特の姿から存在感を示していた「飛翔」だったが、2008年にはビルそのものがねじれているモード学園スパイラルタワーズが竣工。度肝を抜くデザインで話題をかっさらってしまった。 さらに2013年には、青いシャツを着た学生らしき人物が「飛翔」によじのぼった画像がインターネットに流され騒然となるなど(もちろん飛翔にのぼるのは禁止)、何かと「飛翔」には悲しいトピックスがつきまとってしまう。