作家・凪良ゆう「小説のラスト3ページに2ヵ月かかった」 岩谷翔吾「ダンスとは真逆だけど、書くことの面白さを感じている」2人が語る執筆の裏側
◆THE RAMPAGE・岩谷翔吾さんとの創作トーク イベントの後半では、THE RAMPAGEの岩谷翔吾さんが登場。THE RAMPAGEは16人組のダンス&ボーカルグループで、2024年の4月からはアリーナツアー「THE RAMPAGE LIVE TOUR 2024 “CyberHelix” RX-16」が行われます。イベント当日も直前までリハーサルをしていたそうで、そこから駆けつけての登壇に、会場からは温かい拍手が。 岩谷さんは趣味が読書で、凪良さんの小説は『流浪の月』からすべて読んでいるそう。2人は既に対談経験があるとのことで、打ち解け合った雰囲気の中、今回は創作活動をメインテーマにトークが進みました。 そもそも、岩谷さんはなぜ小説を読むようになったのか。きっかけは、幼い頃から親が転勤族だったことが影響していると振り返ります。 「僕は、幼稚園、小学校、中学校、高校と全部転校生だったんです。転校した先で一から友人関係を作ったり、既にできあがった関係に入っていくことが多くて。それも影響して、自然と今の明るい性格になったのかなと思います。人間関係を築く中で、自分が笑顔で相手に愛を与えれば、向こうも笑顔で返してくれるし愛をくれることを、幼いながらに知りましたね。それでも大変な時、僕を支えてくれたのが読書でした。だから今でも当たり前に読んでいます」
◆創作活動をすることで無駄な経験がなくなる コロナ禍をきっかけに、自分の人生をもとにした小説を書き始めたという岩谷さん。「コロナ禍で活動ができなくなった時、パフォーマーとしていつも体一つで表現しているからか、言葉に憧れました。ボーカルだったら歌詞を通して言葉を伝えられますが、パフォーマーは言葉を伝えられない。だからこそ、最初は自分の人生を書いてみようって」 さらに執筆を通して心境にも変化があったそうで、「人生には紆余曲折があって、それを書いていくうちに、過去が今の自分の背中を押してくれていることに気づいたんです。幼少期に大変だと感じていたこと、それこそ友だちづきあいとか、大人になってみると“間違っていなかったんだ”って。本当に無駄なことなんてないんだと思えました。そこから、ダンスとは真逆のことだけど、書くことの面白さを感じています」と執筆のきっかけを明かしました。 凪良さんも、「小説を書いていると、無駄なことなんて何もないと思える」と岩谷さんに応えます。 「どこかで“全部ネタにできるかもしれない”と思うと、しんどいことがあっても“これも経験だよね”って思える。私も複雑な家庭で育ったほうなので、当時は本当に嫌でした。それでも、作家になってそれらを言葉にするようになってから、あの経験も今の自分を形作ってくれているんだな、と思えるようになりました」と、書くことへの思いを振り返りました。 さらに話題は“書くときに一番大変なこと”に移り、物語を書き始めても、最後まで書き上げられない人が多いという話題に。岩谷さんは、最初に書いた小説では立ち止まることなく最後まで書ききったそうで、“初めてでそれはすごい”と凪良さんが絶賛する場面も。 凪良さんは、書き上げるまでに苦労した作品があるそうで、書き下ろしだった『滅びの前のシャングリラ』では、ラスト3ページに2ヵ月かかったことを明かしました。悩み続けた結果、書き出したら半日で書き上げられたとのこと。エンドマーク(作品自体の終わりを表す文字)を置いた時は、思わず泣き伏したと話し、会場からは参加者が息をのむ様子が伝わってきました。