サッカー王国に誕生した極貧球団・くふうハヤテの現在地 ジャイアントキリングの精神も、「ないものづくし」に経営苦悩 #ニュースその後
GM、監督は静岡出身の野球人
新球団は地域密着の方針を掲げる。GMには元横浜監督の山下大輔氏、監督には元近鉄で守護神も務めた赤堀元之氏が就任した。 2人とも地元・静岡県の出身だ。当然、静岡出身者であることも大切な要素だった。 「うちは資金が潤沢にあるセ・パのファームリーグみたいに投資できない。厳しい環境でもやっていただけることも加味しながらでした」 資金面で厳しい中、用具や設備などの初期投資は不可欠だった。 「ボール1個もない状況だった」と池田社長。 巨人、広島などで指導者を務めた内田順三打撃アドバイザーは「ボールもマシンもない。ないものづくしだった」とスタートしたばかりの当時を振り返る。 ボールなどの道具や機材は球団が新たに購入してそろえた。
名古屋遠征で宿泊費削減に日帰りも チームバス購入でファンも運ぶ
出費がかさむだけに経費節減の必要があった。 3月の名古屋遠征は業者に依頼して静岡からバスで往復約6時間の日帰りにし、宿泊の費用を浮かせた。 5月に自前のバスを数千万円で購入すると遠征先では低額のビジネスホテルで宿泊するが、一部ベテラン選手を除いて原則2人部屋だ。 球団運営のやりくりには工夫も必要だ。 自前のバスを公式戦開催日にJR清水駅~本拠地「ちゅ~るスタジアム清水」までの無料シャトルバスとしても使用している。 選手が乗る移動用のバスをファンに開放するのは日本球界では異例だが、これも潤沢な資金がない新球団ならではの発想だろう。 打撃ケージが足りないためケージにスポンサーの看板を付けて資金を調達することも検討中だという。
リーグ最下位も目標は12球団に選手送り込むこと
整っているとは決して言えない環境面や待遇面はセ・パ12球団とは状況が全く違う。 ただ目指す到達点もまた違う。 くふうハヤテには、12球団に選手を送り込むという目標がある。 池田社長は「全て整えようとは思ってないです。給料も含め、(メジャーの)シングルAとか2Aとかマイナーリーグの考えです。早く上で夢をつかんでくれ、というチームだと思う」と力を込める。 新球団は参加したウエスタン・リーグで現在、最下位。ただ4月のウエスタン・阪神戦で3連戦3連勝して存在感も示している。 赤堀監督は「楽しみは十分あると思います」と語る。 チームは3月のウエスタン開幕戦でオリックス・宮城と対戦した。 くふうハヤテの全選手の年俸合計金額が「(NPB主力選手の)1人分の給料ぐらいの時もあるわけですよ」と池田社長。だからこそ「まさにジャイアントキリングだと思ってます」と本音を漏らす。 セ・パ12球団との格差を考慮しても、平たんな道のりではない。 それでも静岡県に誕生した新球団は、〝ジャイアントキリング〟の精神で挑戦を続けていく。 ※この記事はデイリースポーツとYahoo!ニュースによる共同連携企画です