【卓球】協会幹部の失言。誰を選んでも批判される強化本部は、2月5日に何を語るのか
女子の3番手を巡る争いと、国内重視の選考会で失ったものを考えてほしい
女子の3番手候補は伊藤美誠か張本美和だが、全日本選手権では伊藤が敗戦後の会見で涙を流しながら、微妙な発言をしている。 「ずっと(五輪の)シングルス優勝を目指していたし、(団体戦に)選出されても出るかどうかはハッキリ決まっていない」「私は昔からの目標として、卓球は『良いところで終わる』というのが一番なんです。『これで終われない』という気持ちもすごくあるけれど、『終わりたい』という気持ちもあります。でも良いところで終わりたいから、もうちょっと欲張って、もう少し頑張ります」。 世界ランキングでは伊藤が10位、張本が16位で、対外的にも二人の間に大差はない。ただ張本が中国選手に善戦している印象はある(そのせいで協会幹部が張本の名前をあげたのかもしれない)。しかし、伊藤には五輪で合計4個のメダルを獲得している大きな経験がある。一方、張本のこの半年間での急成長は目を見張るばかりで、この成長曲線はパリ五輪までの半年間でも上昇していくだろうという期待もある。判断は非常に難しい。 2月5日に発表される会見の中でも協会は「世界ランキングによる」という言葉は使えないだろう。なぜなら強化本部は世界ランキングを無視する形で、パリ五輪の選考方法と選考基準を決めたのだから。 もしも3人目の代表が張本になった場合、すでに世界選手権釜山大会(2月16日~)の代表になっている伊藤の「もうちょっと欲張って、もう少し頑張ります」というコメントは何を意味するのだろうか。 10年近く、日本代表として世界選手権や五輪で活躍した伊藤美誠は、小さい頃から卓球に打ち込み、日本を牽引してきた。2016年のリオ五輪での活躍はもちろんだが、何より2021年の東京五輪で水谷隼とともに混合ダブルスで金メダルを引き寄せ、日本に卓球ブームを巻き起こした貢献者である。 全日本選手権最終日に日本代表の渡辺武弘監督は記者に囲まれ、「(3人目の代表は)強化本部で会議を重ねながら決定する。悩ましい」「今日はオリンピックの話は控えさせてください」と慎重な発言をしている。当然だろう。 また、2年間の選考レースを振り返ってどうだったのかという質問に対して、「当初、過密スケジュールで選手も大変だったと思うけれども、終わってみれば選手が歯を食いしばって、選考会も頑張る、国際大会も頑張る、全日本も頑張ると、(選考会を)振り返って良かったと思う選手もいるのかなと思っている。この選考会が間違っていなかったとオリンピックの結果でみなさんに納得してもらえるように頑張りたいと思っています」とコメントを残した。 本当にこの選考会が間違っていなかったと選手は思っているのだろうか。世界の中で日本卓球協会だけが貫いた五輪選考方式。得たものもあるかもしれないが、それよりも失ったものが大きいことを現場の人たちは気づいているはずだ。 そして、2月5日に強化本部長、男女両監督は何を語るのだろうか。
卓球王国 今野昇