現物ETF上場後のビットコインの展望と課題
ビットコイン現物ETFの初日の取引は活況
米証券取引委員会(SEC)は、1月10日に暗号資産ビットコインを運用対象とする現物ETF11本を承認した(コラム「SECがビットコインの現物ETF(上場投資信託)を承認」、2024年1月12日)。 これを受けて11日には、ニューヨーク証券取引所、ナスダック、シカゴオプション取引所(CBOE)BZXの3主要市場で取引が始まった。初日の売買代金は、46億ドル(6,700億円)。2日目も31億ドル、合計で77億ドル(約1.1兆円)と活発な取引となった。 2021年に米ETF大手プロシェアーズが初のビットコイン先物ETFを立ち上げた際には、上場後2日間で売買高は10億ドルに達したが、現物ETFの売買はそれを大幅に上回るペースで始まったのである。 現物ETFの取引が開始された11日には、ビットコインの価格は前日の4万5,000ドル台から、2021年12月以来初めてとなる4万9,000ドルを超えた。ただしその後は下落に転じ、翌12日には4万2,000ドルを割り込んだ。 2021年のビットコイン先物ETFや大手暗号交換所(取引所)のコインベース・グローバルが上場した直後には、材料出尽くしでETFは急落している。同様のことがビットコイン現物ETFの上場直後にも生じており、ビットコインのボラティリティの高さという課題も改めて浮き彫りとなった。
ビットコイン取引の安全性が高まる
それでも、米国での現物ETF上場は、今後のビットコイン市場に追い風となる可能性は高い。これまで投資家は現物のビットコインを、暗号資産交換業者を通じて売買してきたが、2022年11月の暗号資産交換業者大手FTXの破綻は、暗号資産交換業者の信頼性を大きく損ねることとなった。同社は顧客資産の分別管理が不十分であったため、同社の破綻とともに顧客が資産を失うことになってしまったのである。 しかしビットコインの現物ETFであれば、投資家はSECの監督下にある証券会社の証券口座を通じて株式などと同様に売買することができ、仮に証券会社が破綻しても投資家の資産は保護される。個人投資家がビットコインの取引を始めるハードルは、かなり下がることになるだろう。