国内外で評価される三池崇史監督 ── 映画製作への思い
アメリカ人に喜んでもらいたいと思っていない
Vシネマとして撮影した『極道恐怖大劇場 牛頭』(2003年)で、カンヌ国際映画祭に招待され話題となったが、それ以外の作品でも海外で評価される作品は多い。それでも海外で支持されることについては、全く意識していない。「例えば3000万円程度で作った作品と、(膨大な予算の)スピルバーグが製作した作品が映画祭で同じ土俵に上がるのは面白いと思うけど、それを意識してはいない。 映画祭で評価される作品と興行的に成功するのとは真反対だし、(製作した作品を)海外の映画祭で2回上映するくらいであれば劇場を観客で埋めることができても、それ以上は難しい。アメリカ人に喜んでもらいたいと思って映画は撮っていない」とバッサリ。あくまで、日本の観客を魅了することを前提としている。
北野発言に「発信しなきゃいけない理由はある」
東京国際映画祭では、北野武監督が「日本アカデミー賞最優秀賞は松竹、東宝、東映、たまに日活の持ち回り」と、現在の日本映画の現状に対して厳しい意見を発して話題となったが、その発言に対し三池監督は、立場を尊重した上で真意を理解している。 「北野さんは(日本の映画界で)特別な存在であって、発信しなきゃいけない理由はある。北野さん自身、フランスで認められていたり、芸人として成功している実感もある。そういう立場だから発信している」。日本映画界については、「映画会社が人材を育てる、監督を育てるようなシステムがあれば、僕のような存在は監督になれていない。映画会社が監督を育てることをやらなかったことで、フリーの僕らが監督をすることができている。そういう日本映画の環境があったから自分たちがいる」と、自らにチャンスを与えてくれた環境として感謝を示している。
『妖怪大戦争』以来の神木隆之介との“共演”
今回の『神さまの言うとおり』では、6年ぶりに神木隆之介と共演しているが、「懐かしいというほど、(神木の存在が)遠く感じなかった。いい意味で僕も彼も変わっていない。“熟(こな)れて”進化していない。以前と同じ新鮮なまま、どん欲に役者をやっている。そこは監督も役者も同じだね」と、俳優も監督も実直に製作に取り組んでいるという。 1991年にVシネマで監督デビューを果たして以来、今年で23年目となるが、その映画への情熱は衰えを知らない。「こだわらず」、「意識せず」、「実直」に作品に思いを注いでいるからこそ、オファーが絶えず、また世界中から支持され続けるのだろう。 ■三池崇史(みいけ・たかし) 1960年8月24日生まれ。大阪府八尾市出身。横浜放送映画専門学院(現・日本映画学校)を卒業後、1991年にVシネマ『突風!ミニパト隊』で監督デビュー。『極道恐怖大劇場 牛頭』はVシネマとして初めてカンヌ国際映画祭に出品。2014年にはローマ国際映画祭で『マーベリック賞』を日本人として初めて受賞。最新作『神さまの言うとおり』は、11月15日から全国公開。