井上拓真に待ち受ける試練とビクトリーロード!
11月7日にさいたまスーパーアリーナでWBC世界バンタム級タイトルの統一戦を正規王者のノルディ・ウーバーリ(33、フランス)と戦う暫定王者の井上拓真(23、大橋)が29日、横浜の大橋ジムで練習を公開した。兄の尚弥と初の兄弟W世界戦に挑む拓真は「勝っていい形でバトンを渡す」と断言した。拓真がベルトの統一に成功すれば、初防衛戦の相手は、11月23日に米国で行われる次期挑戦者決定戦、元IBF世界同級王者、エマヌエル・ロドリゲス(プエルトリコ)と元WBC世界同級王者のルイス・ネリ(メキシコ)の勝者になる。兄が倒した好敵手か、はたまた嫌われ者の悪童か。最強相手に試練の世界戦が続くが、それは拓真が兄に並ぶスターへと昇りつめるビクトリーロードだ。
五分以上の勝負ができるまでに成長
髪の毛の上部分だけをWBCのベルトと同じ緑色に染めた。 すでに戦闘モード。兄と同じく冒頭の10分だけ公開された練習では、ウーバーリと同じく左構えにした太田光亮トレーナーのミットにスピードの乗った左ジャブを叩き込んでいく。 「最初ウーバーリが、相手に決まったときは(勝つのは)厳しいかなと思っていたが、拓真は、伸びてきた。今は五分以上。やることをやれば十分に勝てる」 父で専属トレーナーの真吾氏の言葉通り、拓真は見違えるほど軽快な動きを見せた。 「統一戦だけど挑戦者の気持ちで立ち向かっていく。プレッシャーはない」 ウーバーリは、北京、ロンドン五輪に出場したアマエリート。今年1月に元WBA世界同級スーパー王者のルーシー・ウォーレン(米国)との王座決定戦を判定で制して正規王者となり、7月にはTKOで初防衛に成功している。16勝12KO無敗のレコードを誇る好戦的なサウスポーだ。 統一戦がなかなか決まらず拓真陣営はヤキモキしていたが、その間、サウスポー対策に時間を割けた。 「試合が楽しみ。サウスポー対策がしっかりとできて、いい時間になった」 成長点はサウスポーへの「慣れ」だと自己分析している。 「前は、ぎこちなかったが、サウスポーに慣れて、スパーでもスムーズ。自分らしさをだせている。逞しくもなったと思う」 真吾トレーナーは、対応力の早さを成長ポイントに挙げた。 「反応して、すぐに対応ができる。今までは考える間があったけど、今は、瞬間、瞬間に対応できるようになった。それを試合に持っていければ」 兄の尚弥からも対ウーバーリ戦用のアドバイスをもらっている。 WBSSの決勝で5階級制覇王者、ノニト・ドネア(フィリピン)と対する兄にしてみれば、拓真のことに、そうかかりっきりにはなれないはずだが、弟は、「前回より今回の方が(助言を)もらっている」と明かす。それだけウーバーリ戦が簡単ではないことを兄は理解している。だから拓真が気になって仕方がないのだ。 「(サウスポーへの)入り方、リードの出し方など細かい部分でアドバイスをもらった」 特に注意を受けていたのが左足の位置だ。サウスポーとは拓真の左足と、ウーバーリの右足がちょうどぶつかることになるが、その外に置くのか、内に置くのか、状況に応じた左足の位置が重要になることを説かれたという。