ブリューゲルの描いた「バベルの塔」はどこがすごいのか? 東京都美術館
「バベルの塔展 16世紀ネーデルラントの至宝ーボスを超えてー」が東京都美術館(台東区上野公園8)で開かれている。 同展の目玉はピーテル・ブリューゲル1世(1525?ー1569)が1568年頃に描いた油彩画「バベルの塔」だ。最高傑作と名高い同作は24年ぶりの来日となる。 バベルの塔とは旧約聖書に神話的部分に登場する。かつて世界中の人々は同一の言葉を話していて、協力して天まで届くような塔をつくろうと試みた。それを見た神が人々の思い上がった行いに激怒し、この場所に降り立ち、人々にいくつもの異なる言葉を与えて、大混乱を起こさせ、建設を阻止したというもの。「バベル」とはヘブライ語で「混乱」を意味することからその名がつけられた。 59.9×74.6センチ木に描かれたバベルの塔は、思ったよりも大きくないサイズだが、構図のせいか巨大さが十分に伝わってくる。神秘的な塔の随所には、よく目を凝らしてみると塔建設に関わる作業員や荷物を下ろす船の乗組員、ここを住居としているのか、洗濯物を干している人などの姿が見られる。ゴマ粒ほどの大きさで描かれた人々は、一説によるとその数は約1400人という。 おごる人類に神が天罰を与えたという、神話的な部分に焦点を当てたバベル塔の作品は数あれど、ブリューゲルのように塔の建設に携わる人々まで緻密に描かれた作品はほかにない。もともと農民が働く姿や町の人々の暮らしの様子を描くのを好んだブリューゲル。「神の怒りよりも、人間が挑戦する場面」を選んで描いのだと同作所蔵のボイマンス・ファン・ベーニゲン美術館のシャーレル・エックス館長は語る。
ブリューゲルが多大な影響を受けたという、ヒエロニムス・ボス(1450?-1516)の作品も見逃せない。写実的な画法でありながら奇想天外な怪物たちが登場する版画や初来日となる油彩画「聖クリストフォロス」と「放浪者(行商人)」も見ることができる。 また同展では16世紀にネーデルランドで活躍した作家の彫刻や絵画など89点を展示している。
「バベルの塔展 16世紀ネーデルラントの至宝ーボスを超えてー」7月2日(日)まで 【観覧料】一般:1600円(1400円)、大学生・専門学校生:1300円(1100円)、高校生:800円(600円)、65歳以上:1000円(800円)※中学生以下は無料、( )は20名以上の団体料金