庶民でも頑張ればなんとか!? いまV8フェラーリ買うなら一番現実的なモデル「360モデナ」とは
フェラーリF355の後継モデルとしてデビューした360モデナ
1999年春にデビューを飾ったフェラーリの8気筒ミッドシップ「360モデナ」は、まさに「歴史的な」、と表現してもよいほどに高く支持された「F355」シリーズの後継車として、市場へと投じられたモデルだ。 そのエクステリアデザインは、もちろんピニンファリーナの手によるもので、実際にはイタリア人デザイナーのダビデ・アルカンジェリが、おもにそのデザインプロセスを担当した。 【画像】フェラーリ360のインパネからエンジンまで(19枚) 前身のF355と比較すると、360モデナのボディデザインは全体的にさらに丸みを帯び、最新のテクニックによってエアロダイナミクスを最適化したものと結論づけることができる。 ボディバリエーションは基本となるクーペと、2000年春に追加設定されたスパイダーの2タイプ。 クーペでは伝統のトンネルバックスタイルは廃止され、大型のリヤハッチゲートからミッドのV型8気筒エンジンの存在を確認することが可能だった。 一方のスパイダーでは、そのトンネルバックスタイルが復活を果たすことになり、ルーフをクローズしたときのデザインの再現性、すなわちクーペのモデナとの共通性も、この「360スパイダー」では十分に高い水準でそれが演出されているように思える。参考までにソフトトップの開閉は、この360スパイダーに至って完全にフルオートマチック化が図られた。 360モデナ、360スパイダーのボディ上面に過激な造形のエアロパーツの存在が見られないのは、それがボディ下面のヴェンチュリートンネルでダウンフォースを得る、グランドエフェクトカーとして設計されているからにほかならない。
スポーツ志向のカスタマーから圧倒的支持を受けるチャレスト
ギヤボックスが横置きされていたために、まだまだ改良の余地が残ったF355のヴェンチュリートンネルと比較すると、360シリーズのそれはより理想的な形状に改められ、リヤビューから確認できるディフューザーも、さらに高い機能性を持つものへと進化した。 F355で、というよりもさらにその前身となった348で確立された鋼板によるセンターセクションを核とするセミモノコック構造も、360では採用が見送られ、その基本構造体はアルミニウム製のスペースフレームに回帰することになった。 フェラーリが360モデナの発表時に明らかにしたデータによれば、そのねじり剛性値はF355比で約44%、曲げ剛性値は約42%の向上を果たしていた。 スパイダーではルーフからリヤピラー内を貫通してテール部にまで連続していた構造材が廃止されたため、ねじり剛性はモデナ比で45%ほどの低下という結果になったが、実際の走りでそれをハンデと感じるシーンは少ない。その理由は、そもそものベースであるモデナが、当時としては非常に高い剛性を有していたからと評してもよい。 ミッドに搭載されるエンジンは、90度のバンク角が設定された3586ccのV型8気筒DOHC5バルブ。F131型と呼ばれるこのエンジンには、さらにさまざまな可変機構が導入され、吸気管長の切り替えシステムを始め、カムシャフトの作用位相切り替え、吸気側のバルブタイミング切り替えなどが新採用されたことで、ピークパワーの追求と実用域での扱いやすさを両立している。扱いやすさという点では、F355で新採用されたF1マチックがさらに進化し、シフトダウン時のブリッピング機能などが追加されたことも大きな話題だった。 V型8気筒エンジンの最高出力は400馬力、最大トルクは373Nmという数字。最高出力では20馬力のエクストラを360は得た計算になる。 前後のサスペンションは、これもまたスペースフレームやボディと同様にオールアルミニウムに近い構造だ。減衰力可変型のダンパーは、ザックスと共同開発されたものであることなど、シャシーにおいても見るべき点は多い。 専用車両の360チャレンジを使用したワンメイクレース、「360チャレンジ」も年々その盛り上がりを高めてきたが、フェラーリは360シリーズの最終進化型として、このチャレンジ用車両と同様に、カーボン製のエアロパーツや425馬力にまで強化されたV型8気筒エンジンを搭載した「チャレンジストラダーレ」を2003年に発表。こちらもさらにスポーツ志向の高いカスタマーから圧倒的な支持を得るに至った。 F355がすでにクラッシック・フェラーリとして扱われ、別の価値が生み出されるなか、いまもっとも購入しやすい8気筒フェラーリといえば、あるいはこの360シリーズはベストな候補といえるのではないだろうか。
山崎元裕