データセンター市場で着々と地盤を強化するAMD
AMDの3日後に決算発表を行ったIntelの決算概要を見ると、データセンター分野(DACI)の売り上げは約33億ドルということであり、AMDは創立以来初めてIntelを抜き、この最も利益率が高い半導体分野で第2位のポジションを獲得したことになる。この急成長の原動力がAI用のGPU製品である事は明らかで、20年前にK8ベースのOpteronブランドのCPU製品でサーバー市場に参入したAMDに在籍していた私としては隔世の感がある。CEO、Lisa Suが半年前に宣言した通り、現在のAMDのターゲットはNVIDIAであり、今後のAMDの躍進が期待される。 ■ATiテクノロジーズ社の取り込みに成功したAMD AI半導体でNVIDIAを追撃するAMDのGPU技術の基となっているのが1985年にカナダで創立されたATiテクノロジーズ社の2006年での買収である。 ATi(Array Technologies Inc.)社はその名も示すように、もともと並列/ベクトル演算を加速しグラフィックス表示技術にフォーカスした会社であった。CPU分野でIntelと熾烈な戦いを繰り広げていたAMDは2000年の中ごろからハイエンドパソコンのグラフィクス性能を向上させる技術に注目していて、企業買収による技術の取り込みを計画していた。幾多あったグラフィクスチップの中で、当時隆盛を誇っていたのがNVIDIAとATiだった。AMDは最初NVIDIAに話を持ち掛けたが、創業者でCEOのJensen Huangが買収後もCEO職にとどまることを条件としたので協議は進まず、AMDはカナダのATiに提案を持ち掛けた。 一年余の交渉の後、ATi幹部はAMDによる買収に合意した。実質はAMDによる買収ではあったが、両社の上層部はATi従業員のやる気を削がないために、実際の組織の統合については「あくまでも対等な合併」という基本を強調した。AMD/ATi両社は日本にも法人格を構え、中規模ながら独立の営業活動を行っていた。こういった世界各国にある法人を同時並行で一社にまとめ上げ、一つのチームにするためにAMDの上層部は“OGT:One Great Team”という標語を用いて、両社のチームが補完的に動きながら相乗効果を生むことに特に気を使った。現場でのまとめ役の一員として働いていた私にとっては初めての経験だったが、いろいろと勉強になった。 半導体業界は現在でも企業合併などによる再編の兆しがあるが、二つの異なる文化/技術を持った企業が一つになる場合、1+1=2という等式以上の結果を導くには細心の注意が必要で、そのプロセス如何で結果を最大化することができるし、その逆も大いにある。 AMDとATiのケースは非常にうまくいった例ではないかと思う。その後AMDはCPU+GPUのヘテロ構造APUの先駆けとなったし、現在NVIDIAに対抗しうるGPUの技術資産もこの合併からもたらされた。