39歳になった山下智久がもっと評価されるべき理由。主演作からわかる“到達した境地”とは
世帯視聴率だけでテレビドラマを評価できなくなってる時代だからこそ、物語とは別に俳優の演技をもっと真剣に見つめるべきではないだろうか?
2024年6月26日に最終話を迎えた山下智久主演の『ブルーモーメント』(フジテレビ)は、そのことを改めて考えさせてくれた。これまで高視聴率俳優を担ってきた山下の演技をほんとうの意味で読み解くことができる作品が本作だからだ。 イケメン研究をライフワークとする“イケメン・サーチャー”こと、コラムニスト・加賀谷健が、本作のテーマそのもののように写る山下智久を解説する。
完全に温まった状態の演技
『ブルーモーメント』の山下智久が、あまりに素晴らしかった。集大成だとか新境地だとか、そんなヤワな形容では到底語り尽くせないだろう。確かに気象研究官にしてSDM(特別災害対策本部)の一員という主人公の役柄は、山下にとっての初体験だとしても。 山下扮する晴原柑九朗が指揮官として出動する現場は、どこも凍てついた場所ばかり。でもそんなところでも山下の演技の温度は極めて高い。サーモグラフィーで測れば、彼の周囲だけが異常にホットな数値が計測できるんじゃないか。 それくらい本作の山下の演技は、完全に温まった状態。向かうところ敵なし。常にアベイラブルな戦闘態勢だとも言える。では、具体的にどこがどう素晴らしかったのか?
永瀬財地の喋り方とそっくり
第1話冒頭からして、パソコン画面を見つめるその表情が、物語る顔としての準備を整えている。どの場面でも次々冴えわたる。例えば、新人の雲田彩(出口夏希)が晴原の助手として入ってきてからの場面。 彩が元気よく出勤すると、晴原が床に寝袋を敷いて寝ている。SNSのフォロワー50万人。テレビで人気のイケメン気象解説者の一面もある爽やかさとは裏腹。新人だろうが、構わずに毒舌を浴びせる。 「興味もない場所で無駄に働こうとする人間に……」と早口でまくし立てるのだが、これは山下が『正直不動産』(NHK総合、2022年)で演じた役柄を彷彿とさせる。嘘がつけない元悪徳不動産営業マン・永瀬財地が、本音をぶちまけるときの饒舌な喋り方とそっくりではないか。