「六軒町のサイカチの木」が強風で損傷 16日に樹木医が補修方法など検討へ(千葉県)
館山市北条の「六軒町のサイカチの木」が9月、強い風のため根っこの際の部分に亀裂が入り、傷ついた。このため、県樹木医会のメンバーが、16日に現場で状況を確認して補修の必要性など、今後の方策を検討することになった。保護活動にあたる団体は同じ日に、この木から接ぎ木した苗木を市内の城山公園に定植。数々の逸話に彩られる木の存在を多くの人に知ってもらい、伝承活動につなげたい考えだ。 この木は、市北条中央公園近くの住宅敷地と市道の境目にある。樹齢は1000年といわれ、江戸時代の元禄(げんろく)大地震(1703年)で津波が押し寄せた際、この木に登った人たちが難を逃れたとの言い伝えがある。 市民らによる「サイカチの木を守る会」が2010年から保護活動に当たり、14年には市の天然記念物に指定された。 2019(令和元)年台風の強風で根元から倒れて再生が危ぶまれ、翌年には天然記念物の指定も解除された。ところが、23年に主根とは別に根を生やし、生命を維持していることが判明。守る会が、市の天然記念物への再指定を目指すなど、保護活動を活発化させている。
今回、亀裂が見つかったのは、地面から高さ50センチほどの「樹洞(じゅどう)」と呼ばれる部分。ぱっくりと口を開けたようになっている。生きているところではないが、つっかえ棒のように木を支える効果があったという。 守る会のメンバーで、樹木医の齊藤陽子さん(78)によると、再生によって新たに上に伸びた枝が、強風で揺すられたことが原因とみられる。 齊藤さんは「損傷していると言える。補修する必要があると思う」と話す。 16日は、午前中に齊藤さんを含む県樹木医会南ブロックの6人が現場で損傷の程度などを調べ、今後の管理方法などを検討する。 午後は城山公園に移動し、1時すぎから一般に公開して2本のサイカチの苗木を頂上広場にある天守閣北側に関係者の手で植える。苗木は六軒町のサイカチの木から接ぎ木したもので、この日から同公園で開催される「たてやまガーデンウイーク」に合わせて行う。 守る会副会長の並木幹夫さん(76)は「サイカチの木の生命力を、ぜひ多くの人に見て、知ってほしい。今回植える苗木は大事に育てて、災害から人々の命を守った伝承とともに伝えていきたい」と話している。 (斎藤大宙)