21世紀のジャムバンドシーンを予言したジョン・スコフィールドの『ア・ゴー・ゴー』
OKMusicで好評連載中の『これだけはおさえたい洋楽名盤列伝!』のアーカイブス。今週はジョン・スコフィールド(以下、ジョンスコ)の『ア・ゴー・ゴー』を紹介する。ゴリゴリのジャズギタリストとして知られたジョンスコが、ニューヨークの前衛ジャズファンクトリオのメデスキ、マーティン&ウッド(以下、MM&W)と全面的にタッグを組み、その後のジャムバンドシーンのマイルストーンとなった記念すべきアルバムが本作だ。グレイトフル・デッドやサザンロックを始祖とするジャムバンド音楽は、元来ロックからのアプローチが中心であったが、ジョンスコとMM&Wはジャズファンクやヒップホップからジャムバンドへの道筋を導き出した。セッションを通して彼らが生み出したジャムバンド的サウンドスタイルは、21世紀に登場した多くのジャムバンドの手本となった。 ※本稿は2019年に掲載
フィッシュの音楽スタイル
ジャムバンドの代表的なグループと言えば、まずフィッシュが筆頭に挙げられる。彼らは、サザンロック、ラテン、ファンク、プログレ、ヘヴィメタルなど、さまざまなスタイルを変幻自在に繰り出しながら、連日6時間以上にも及ぶパフォーマンスを披露することで注目されたグループだ。80年代後半に登場したフィッシュは60年代から活動していたアメリカ・サンフランシスコを代表するグレイトフル・デッドの演奏スタイルを蘇らせただけでなく、その間の20年間に登場した新しい音楽も加味してその幅を広げた。92年にメジャーデビューすると、大きなフェスに参加した若者たちを熱狂させ、多数のリスナーを得ることに成功する。 徐々にフィッシュはブルーグラス音楽に接近、90年代中頃にはヒプノティック・クランベイク、ストリング・チーズ・インシデント、レフトオーヴァー・サーモンらのようにブルーグラスをバックボーンに持つアーティストたちがジャムバンドシーンに相次いで登場し、デレク・トラックス・バンド、ガバメント・ミュール、ワイドスプレッド・パニック、モーらのようなサザンロック・ベースのグループとサウンドを二分するようになる。