ボートレースの絶対王者、獲得賞金40億円超えの松井繁が果たしたい夢とは
ボートレースの世界で戦ってきて、まもなく25年が過ぎようとしている。40億円を稼いだ男が果たしたい夢とは。(雑誌『ターザン』の人気連載「Here Comes Tarzan」No.869〈2023年11月22日発売〉より全文掲載) [画像]ボートレーサー・松井繁
公営競技の中でも最高ランク。ボートレースの絶対王者
“絶対王者”の異名を取る男がいる。それが、ボートレーサーの松井繁である。とにかく強い。ボートレースでは最高峰のSGからG1、他にも多くのランクのレースがあるが、いちいち彼の強さを紹介すると、キリがない。 で、みんながすぐに納得できる証拠を示そう。これまでの獲得賞金が40億円を超えるのである。なんと、競馬、競輪、オートレースの公営競技の中でも最高ランクの一人なのだ。 最近、ボートレースでは有名俳優を配しCMを盛んに行っているし、東京・六本木から生中継を行ったりして勢いを感じる。 松井は現れるなり、「『ターザン』ってカラダ鍛えるヤツちゃうの。全然、鍛えてへんで、大丈夫か?」と、笑う。 日本最高のレーサー。勝つ理由があるのだ。それが知りたい。とりあえずボートレースの魅力について語ってもらった。 「まず、この競技をまったく知らない一般的な人に知ってほしいのはスピード。それにモーター音の迫力ですね。テレビの画面で見ていても、そこはなかなか伝わらないですから。これを最初に現場で感じてほしい。 この競技を知るようになれば、もっと深いとこまで見ることがあるのですが、そこは順を追って説明できたらいいと思っているんですよ」
公営競技の中で一番ドキドキするんじゃないかと思う
最高時速は80kmにもなる。コーナーは1マーク、2マークが300mの距離に置かれ、それを3周して勝負を決する。1号艇から6号艇の全6艇で競う水上のレースなのである。 昔は1周1コーナーでトップに立つと、そのままゴールすることも多かった。でも、今はコーナーでの位置取り、立ち上がりによって着順の入れ替わりがあるし、それだけに勝負にはコクがある。 「公営競技の中で一番ドキドキするんじゃないかと思いますね。ただね、僕らは公営競技としてやってきてますんで、スポーツ選手というより、プロの職人という感じでやってますね。スポーツと違って楽しいということは一切ないんで、職人ということはそういうことですね」 モーターやプロペラの調整もレーサーに懸かっている。つまり、車のレースで言えば、メカニックとレーサーを一人で行うのだ。 ボートやモーターはレース場のモノが抽選で割り当てられる。もちろん、いいのも、悪いのもある。それを修正し、推進力の源泉であるプロペラを叩き、削り、好みに仕上げる。 「完璧に調整できたことは何回かあるんですよ。でも、ボートもモーターも抽選ですから、それの頂点を見極めないといけない。やりすぎて逆に壊してしまう場合もある。だから、ここがこのモーターのマックスなのかなというのをわきまえて、調整していかないとダメなんですよね」