名古屋発祥のヴィレヴァン 「いつまでもおじさんの味方で」
新年が明け、「今年はどこに行こうかな?」なんて旅の計画を立てる人も多いのでは。東海地方にはまだまだ知られていない魅力ある場所が眠っている。行ってみたくなる、そして誰かに教えたくなる。そんな魅力あふれる珍スポットを記者たちが訪ねた。 【写真】約5万点の商品が並ぶ店内 思春期に誰もが憧れる「大人の世界」。私にとって、その入り口は、幅広い本や雑貨を取り扱う「ヴィレッジヴァンガード」(通称・ヴィレヴァン)だった。 今から約30年も前の高校生の頃、地元・札幌の店舗に恐る恐る足を踏み入れた。 映画やロックに代表される1960年代アメリカのカウンターカルチャーに関する書籍や雑誌、雑貨などのラインアップは、カッコイイ大人の世界に彩られた、まさに「夢の玉手箱」だった。 ジャック・ケルアック(1922~69年)の「路上」、ウィリアム・バロウズ(1914~97年)の「裸のランチ」……。それまで国語の教科書に出てくる作家とは違う“不良作家”たちを知ったのもヴィレヴァンだった。 全国300店以上に広がるヴィレヴァンの第1号店は名古屋市天白区の閑静な住宅街に建つ。きらびやかな装飾を施した倉庫の店舗。ヴィレヴァン発祥の聖地は1986年11月2日のオープン当初から変わることはない。 雑貨や書籍など約5万点の商品が所狭しと並ぶ店内を案内してくれたのは、名古屋市出身の店長、小野田将也さん(50)。「学生時代から客として通い詰め、店の雰囲気が好きだった」 大学卒業後、ここ本店でアルバイトを経験。2年間の修行を経た後、正社員として秋田、東京、松山、金沢など全国のヴィレヴァンで店長を務めてきた。「店舗だけ用意され、『あとは任せたよ』と言われ、必死に音楽やカルチャー雑誌などを勉強した」 ヴィレヴァンの由来は、ジャズ好きだった創業者が米・ニューヨークにある同名のジャズクラブから命名した。店内に流すBGMはジャズと決めている小野田さんは「1号店だからこそ、創業時のにおいを今も残してます」と語る一方、時代の流れも感じているという。「変えなくちゃならないもの、変えちゃいけないもの、両方をしっかり見極めていきたいですね」 どんな店舗を目指しますか――。私の問いかけに、小野田さんは店内を見回し、しばしの沈黙の後、こう締めくくった。 「いつまでもおじさんの味方でいたいですね。僕が若い頃に感動した店であり続けたい」 ヴィレヴァンの聖地は今年、オープンから40年目の節目を迎える。【真貝恒平】 ◇ヴィレッジヴァンガード本店 名古屋市天白区植田西1の515。名古屋市営地下鉄・鶴舞線の植田駅、塩釜口駅から徒歩15分。国道153号沿いで駐車場あり。営業時間は午前11時~午後10時。年中無休。電話052・805・2535。