介護に迫る限界 「やってください」相談役のケアマネにかかる重圧
ゴミ屋敷の掃除、救急車の同乗、お葬式の相談……。介護保険のケアマネジャー(ケアマネ)が本来の仕事ではないことを背負っています。居宅介護支援事業を行っているマロー・サウンズ・カンパニー(千葉県市川市)代表で、ケアマネでもある田中紘太さんに聞きました。【聞き手・須藤孝】 【写真】家族と外出 東京・浅草で ◇ ◇ ◇ ◇ ◇相談役 ――ケアマネが大変と言われています。 ◆ケアマネは相談役だと思っていただくことが多く、実際にもそのとおりです。要介護認定を受けると、まずケアマネを探してくださいと言われます。 介護サービスはケアマネが作るケアプランがもとになります。体の状態、家族の状況などのほかにも、介護費用や、どの介護サービスを使うか、事業所との連絡調整などもします。介護が始まって、どうしよう、となって、最初に接する一人です。 ケアマネは介護についての相談相手なのですが、実際には、なにが介護でなにが生活かを分けることは難しいのです。ですから我々も「なんでも相談してください」と言いますし、本人や家族も「とりあえずケアマネに相談しよう」となります。 ◇なんでもあり ――そのことが限界に来ています。 ◆ケアマネはつなぎ役でもあります。この問題は介護サービスの事業所に、これは医療機関に、などと振り分けます。しかし、ケアマネがなんでもやっている実情があります。 ――どんなことですか。 ◆なんでもありです。ゴミ屋敷の掃除から、救急車の同乗、入院の手続きなどです。施設に入ると家が空き家になるのでどうしたらいいか、配偶者が死去した時の相続の手続きをどうするか。マイナンバー保険証の作り方、ゴミ出しの相談もあります。自分が亡くなったあとのお葬式をどうするか、お墓の相談をされることもあります。 ◇行政の代わり ――ケアマネに頼っているのは本人や家族だけではないそうですね。 ◆救急隊から救急車に乗ってくださいと言われることは多いです。病院に着くと身元保証人になってくださいと言われます。 家族がいても関係が悪く、一切面倒はみたくない、と言われることがあります。ケアマネの仕事ではないとわかっていても、やらざるをえない状況があります。 たとえば、土日祝日や夜間の場合、地域包括支援センターや役所に相談できないことがあります。しかし急を要する場合があります。我々が動かざるをえないことがあります。 ◇引き受ける人がいない ――外注すべきだと言われます。 ◆振り分ける先がない場合がたくさんあります。たとえば、退院する時に自宅の電気・水道・ガスなどを復旧しなければなりません。私も必要に迫られてやっていますが、非常に大変です。自分の立場を説明することから始めなければいけませんし、電気会社から顧客番号を聞かれて書類を探さなければなりません。半日、1日かかりました。 電気が止まっていては生活ができません。ほうっておくわけにはいかないのです。誰かほかの人に、と言っても誰もいません。 ――ケアマネのなり手がいないと言われています。 ◆ヘルパーから始めて介護福祉士になり、実務を経て難関の試験があります。それなのに、ケアマネになると処遇改善加算が付かなくなり、実態としては給料が下がるのです。誰もやりたがらないのは当たり前です。資格を取っても実務に就かない人がたくさんいます。実習生も受け入れていますが、みなが言うのは、「やりたい気持ちはあるが給料が下がっちゃう」ということです。 ◇よい仕事 ――ケアマネは大切な仕事です。 ◆私はケアマネを15年ぐらいやっていますが、やりがいのある仕事です。第二の家族というぐらいに、近くで、長く寄り添います。最後まで面倒をみてほしいと言われ、頼りにされます。 ケアマネは介護の一番の窓口です。現場で状況を確認して情報を集めて、介護の計画を作ることは、ケアマネの役目です。必要とされ続けることは間違いありません。(政治プレミア)