【ネタバレレビュー】ついにシスらしき黒幕も登場!「スター・ウォーズ:アコライト」前半戦総括&今後の展開を考察
ディズニープラスで配信中のシリーズ最新作「スター・ウォーズ:アコライト」。サーガのなかでもっとも古い時代にスポットを当てた本作は、『スター・ウォーズ/ファントム・メナス(エピソード1)』(99)の約100年前、すなわち、まだ戦争が起こっていない、銀河共和国が平和だった時代ということになる。 【写真を見る】キャリー=アン・モスもイ・ジョンジェもちょっと若い?16年前に惑星ブレントクを訪れた4人のジェダイたち 平和とはいえ、どんな時代にも事件は起こる。「スター・ウォーズ:アコライト」は1人のジェダイ・マスターが殺されるという衝撃的な事件で幕を開け、ミステリーを加速させる。そしてエピソードが進むほど、そのキャラクターの背景や行動の理由がおぼろげに見えてくる。現在のところ全8話のうち、第4話までが配信され、前半戦が終了。ここまでの物語を改めてネタバレありで整理してみよう。 ※本記事は、ネタバレ(ストーリーの核心に触れる記述)を含みます。未見の方はご注意ください。 ■ジェダイ連続殺人事件、生き別れた姉妹…怒涛の前半戦を一挙おさらい 第1話の冒頭で殺されたジェダイ・マスター、インダーラ(演じるは「マトリックス」シリーズでおなじみのキャリー=アン・モス!)は不意打ちのような形でナイフに貫かれ、命を絶たれる。この時点では犯人の名はわからないが、ジェダイ・マスターと対等に張り合うほどのフォースの使い手で、復讐に燃える若い女性であることは見てとれる。彼女がメイ(アマンドラ・ステンバーグ)という名であることは、この後に明かされる。 事件の容疑者として、メイとよく似た女性オーシャがジェダイに身柄を拘束される。このオーシャこそが本作の主人公。彼女は、ジェダイ・マスター、ソル(イ・ジョンジェ)のもとでパダワン(=弟子)として訓練を受けた過去があり、なんらかの理由から6年前にジェダイ・オーダーを去って、いまはスペースシップの修理工をしている。ソルはかつての弟子の無実を信じて疑わなかった。それもそのはず、実は、メイはオーシャの生き別れた双子の姉だった。そして彼女たちは、いずれも、姉が、妹が死んでしまったと思って、ここまで生きてきたのだ。 第2話では、姉妹が運命の再会を果たすことになる。メイが命を狙っているジェダイはインダーラだけではなかった。ほかに3人のジェダイをターゲットにしていることが明かされるのだ。2人目の標的マスター・トービン(ディーン=チャールズ・チャップマン)はジェダイ寺院で、“バラシュの誓い”と呼ばれる苦行を行っており、空中浮遊したまま10年も瞑想状態を続けている!無我の境地にあるジェダイは最強で、フォースに守られた彼は目を閉じたまま、まったく動くことなくメイの攻撃をはね返す。そこでメイは一計を案じ、トービンの良心に訴えかけ、現実に引き戻すという作戦に打ってでる。これは、まんまと成功し、トービンは自ら毒を飲み、命を落とす。 一方のオーシャは、かつての師ソルや若いジェダイたちと共にメイの行方を追いかける。メイに通じているカイミール(マニー・ジャシント)という青年を尋問し、メイが4人のジェダイを殺そうとしていることが判明。残る2人のうちの1人はソルで、もう1人は「スター・ウォーズ」史上初の登場となるウーキー族のジェダイ・マスター。このキャラクター、ケルナッカ(ヨーナス・スオタモ)は2話の最後に姿を見せ、ファンを喜ばせた。 第3話は現在進行の話をいったんお休みし、時代をさかのぼってオーシャとメイが生き別れるにいたった16年前の過去を語る。惑星ブレンドクの女系一族に生まれた彼女たちは魔女の素養を持っていた。そこに現われたのが、4人のジェダイ。言うまでもなく、インダーラ、トービン、ソル、ケルナッカだ。彼らは姉妹のフォースの素養を知り、ジェダイ・オーダーに引き入れるというミッションを背負って、この地にやってきたのだ。好奇心旺盛なオーシャは外の世界を見たいという欲求を抱えており、この要請に前のめりになる。しかし、家族と離れたくないメイは妹オーシャと引き離されることも嫌がった。結果、そこに悲劇が起こり、オーシャとメイは最悪の形で引き離されることになる。 第4話では現在進行に戻り、ケルナッカが隠遁している星、コーファの森林地帯が主要な舞台となる。メイはカイミールの案内でこの地に降り立ち、仇であるケルナッカの行方を探る。そしてオーシャとソルの一行も、この地にやってきて、彼女の新たな犯行を阻止しようとする。この追いかけっこが第4話の基本で、同時にそれは物語のスリルとして機能する。ところが、メイが目的地に着いた時、ケルナッカはすでに息絶えていた…。それはメイの師匠にして、赤いライトセーバーを持つ謎の人物の仕業。この人物は、ソルら複数のジェダイたちが束になって立ち向かおうとも、ライトセーバーひと振りでいとも簡単に全員を吹き飛ばしてしまうほどの強大な力を持っていた。ジェダイたちの安否もわからないなかここで、本エピソードは終わってしまう。謎の人物の正体は?そしてオーシャとメイの命運は?早くも5話の展開が気になって仕方がない! ■黒幕の正体は?ソルとオーシャの修行時代も描かれる?後半戦の注目ポイント! ざっとあらすじを追ったが、ここからは気になるポイントを挙げていきたい。まずはオーシャとメイの間にある葛藤。第1話、2話でフラッシュバックの形で提示されてきた惑星ブレンドクでの悲劇は、第3話で明確に描かれる。ならば、それから16年を経た現在の彼女たちは、お互いをどう思っているのか?それが今後のドラマを左右することは容易に想像がつく。 ソルとオーシャの師弟関係も大いに気になるところ。『ファントム・メナス』で語られていたように、ジェダイになるための訓練開始に最適な年齢は無垢な赤子のころであり、少女となっているオーシャは『ファントム・メナス』のアナキン・スカイウォーカーと同様に、少々歳を取り過ぎている。それでも、クワイ=ガン・ジンと同様、ソルはオーシャのなかになにかを見いだし、彼女を弟子にする。だが、オーシャは結果的にジェダイ・オーダーを去った。そこでなにが起きたのかも今後、明かされるだろう。 一方の師匠と弟子、まだ正体がわからないシスの暗黒卿と思われる人物と、メイの師弟関係は悪の側だけあってより複雑だ。ジェダイを暗殺するのだから、メイが凄腕であることは間違いないし、その原動力である復讐心をシスが利用するのも、すんなり飲み込める。シスに師弟愛などあるはずがなく、用済みとなった弟子をバッサリ切るのは、これまでのシリーズで描かれてきたとおり。第4話でジェダイの重鎮ヴァーネストラ・ロウ(レベッカ・ヘンダーソン)が予見しているが、メイはシスの大きな計画の一部に過ぎないのかもしれないのだ。 そしてシスと思われる人物はメイに、“武器を使わずにジェダイを殺す”という難題を課している。第1話のラストでその人物はメイにこう語る。「侍者(=アコライト)なら、武器を使わずにジェダイを殺せる」――メイをそそのかすための方便の可能性もあるが、メイはアコライトとなることを目指しているのは間違いない。しかし、第2話で死んだと思っていた妹に再会したメイは明らかに動揺し、第4話ではなによりも彼女のために自身の生き方を思い直す選択をする。それがどうなるのかも、今後の見どころだ。 ■理想の上司すぎるマスター・ソルに、クセ者なカイミール。気になるキャラクターばかり! また、本作には多くのジェダイ・マスターが登場するが、ダントツに目立っているのはマスター・ソル。とにかく、人間ができすぎているほどできている。反抗的な態度をとりジェダイを去ったことを謝る、かつての弟子オーシャに対して、心から「私の教え方が悪かったのだ」という度量の大きさ。オーシャに「おまえが向き合うべきはメイではなく、自分の過去。それは私も同じだ」という、高位に就いても驕らず自己鍛錬を続ける意識。ジェダイたる者、かくあるべしというべきキャラで、「スター・ウォーズ」ファンなら誰もが彼を好きになるだろう。それだけに、メイの標的となったジェダイの最後の1人という立ち位置がどう変化していくのか、「イカゲーム」で脚光を浴びたイ・ジョンジェの好演ともども、目が離せない。 ソルもそうだが、ブレンドクに赴いた4人のジェダイは、このミッションを心から後悔しているようだ。なにしろ、トービンは良心の呵責に耐えかねてジェダイとしての活動を離れ、いつかメイがやってくることを悟り10年も瞑想を続けたあげく、メイに「許してくれ。正義だと思っていた」と言い残して毒をあおる。ケルナッカはジェダイとのつながりを完全に断ち、隠遁暮らしをしている。「過去とは折り合いをつけた」というソルにしても、メイの出現により、それが十分ではないことを知る。彼の新たな“折り合い”も、今後を占ううえで重要なエッセンスとなるだろう。 ほかにも気になるキャラは多い。メイに味方するカイミールは最初こそ軽薄な青年に見えたが、彼女の師匠のことも把握しており、チャラい見た目以上に多くを知っている様子。ソルの現在のパダワンで、オーシャと同世代と思われる女子ジェキ・ロン(ダフネ・キーン)も味のあるキャラで、ジェダイを辞めてから6年が経過したオーシャを“真のジェダイ”と評し、「なにを失うかより、なにを生き延びるかよ。あなたは多くを生き延びた」と励ます。彼らの今後にも注目したい。 本作は「スター・ウォーズ」シリーズ初のミステリー作品という触れこみだったが、その看板に偽りはない。アクション面なども含み、新たな試みに取り組んでいる一方で、心震わすエモーショナルなドラマや、よりダイナミックになったフォース対決、様々な星への旅など「スター・ウォーズ」らしさが、しっかりと息づいている。後半は一体どうなるのか?コアファンもシリーズ初心者にとっても衝撃の展開が予想される本作を、引き続き、ウォッチしていきたい。 文/相馬学