「鳥取県なんか人口、何人おんねんっちゅう話でしょ?」“鳥取県ディスり”で炎上した百田尚樹氏、本人・鳥取県ともに意外とダメージが少ないワケ
アメリカでは泡沫候補だったトランプが多数派を形成し、大統領に就任するまでに至ったが、日本はアメリカほどには政治的な分断は起こっていないし、政敵を手厳しく批判することに対して、寛容でもない。 百田氏は、高市氏を支持していたが、下手をすると百田氏や、彼の支持者の応援が「ほめ殺し」になってしまう可能性もある。熱狂的な支持者がいることは、諸刃の剣でもある。 添田氏の一件もそうなのだが、本来なら連携すべき保守派同士の亀裂を生んでしまっており、誰も得をしていない。
鳥取の話題に戻ろう。百田氏の今回の一件の直前に、鳥取がらみで“炎上”が起きていた。 ラッパーの呂布カルマ氏が、鳥取県の智頭町にある「恋山形駅」の写真とともに「何だこの駅…気持ちわりぃ…」と投稿して、賛否両論の声が巻き起こった。呂布カルマ氏は、自身の意見に対する批判に反論して炎上状態となった。 ■「ディスり」を逆手にとった鳥取県 この騒動に対して、平井伸治・鳥取県知事は県議会で「鳥取県は『炎上商法』でやっている。そういう意味でまんまとひっかかった」と述べ、話題となった。さらに、これに便乗して、鳥取県と智頭急行は「恋山形駅応援プロジェクト」の実施を決定した。
「炎上商法」と言っても、炎上したのはむしろ呂布カルマ氏のほうで、鳥取県や恋山形駅はむしろ恩恵を受けた側だ。 百田氏の件にしても、あまり世の中で話題にならない鳥取が大きな話題になり、しかも鳥取に対する擁護意見が多数寄せられたという意味では、やはり鳥取県は大きな恩恵を受けたと言えるだろう。 なにせ、百田氏のSNSのフォロワーは鳥取県の人口と同じくらいいるのだ。そういう人物がネタにしてくれただけでなく、それをきっかけに鳥取について大きな話題が生まれた、きっと、平井県知事も喜ばれているに違いない。
総裁選に勝利した石破氏を叩くぶんには、世間は「強者への挑戦」と見なされるかもしれないが、鳥取県のような過疎の弱小県を叩くと、「弱い者いじめ」に見えてしまう。擁護する人がほとんどいないのは当然のことである。
西山 守 : マーケティングコンサルタント、桜美林大学ビジネスマネジメント学群准教授