<道徳教育> なぜいま「特別の教科」に格上げを検討?
第1次安倍内閣以来の課題
道徳教育の強化は、保守合同(1955年)以前からの自民党の一貫した悲願です。一方で道徳教育関係者の間にも、「道徳の時間」が実際には学級活動や教科の授業に振り替えられていたり、時間が確保されていても十分な指導が行われていなかったりする実態があるという指摘も根強くありました。 「『美しい国』戦後レジームからの脱却」を目指す安倍晋三首相にも道徳教育への思い入れは強く、第1次安倍内閣の下で首相直属の機関として設置された「教育再生会議」でも規範意識の徹底と「道徳の時間」の充実を提言。2008年に改訂された現行の学習指導要領では「学校における道徳教育は、道徳の時間を要として学校の教育活動全体通じて行う」と、「道徳の時間」の重要性を強調。新設の「道徳教育推進教師」を中心に全教師が協力して道徳教育を展開することも求めました。
しかし、それでもなお「教育再生」は実行が不十分だった、というのが第2次安倍内閣の認識です。教育再生会議の後継機関である「教育再生実行会議」は第1次提言(13年2月)で「道徳を新たな枠組みによって教科化」することを提案。先の有識者懇談会の報告を待って、下村博文文部科学相が14年2月に「道徳に係る教育課程の改善等」を中教審に諮問しました。 文科省では中教審答申を受けて、指導要領の一部改訂により2015年度から道徳の教科化を実施したい考えです。ただし教科書の編集・検定・採択には最低3年かかるため、本格的なスタートは18年度以降となる見通しです。それまでは全小中学校に配布している「私たちの道徳」(旧「心のノート」)の使用が中心になりそうです。 (渡辺敦司/教育ジャーナリスト)